第20話

「君はここで何してたの?」





お互いに落ち着いた頃、彼は聞いてきた





「、、海水浴」





「嘘はダメだよ」





「、、、」





気づいてるだろうな





だから、私は正直に話すことにした





「、、大切な人達に会おうとしてたの」





「大切な人達?」





「そう、ここにはもう居ないから、、、だったら、私が会いに行けばいいって思ったから」





「、、会えた?」





私はその質問に答えず、月のある方に視線を向けた





「、、距離が更にできた、、、かな」





そう言って、月に手を伸ばした





その手を彼は優しく包み





「なら、そのできた距離で寄り道しない?」





「、、寄り道?」





「そう、距離ができたってことはまだ行く必要がないってことだよね?だったら、それをうまく使お」





できた距離で寄り道、、、いいかもしれない





現に私はまだあっちに行く勇気はないから





それができるまでの間





長くなるか短くなるか分からないけど、寄り道、、、したいな





「てことでさ、」





「、、、?」





彼は綺麗な笑みを作ると





「スズを俺にちょうだい?」






そう言った






それがどういう意味を含むか私には分からない





だけど、こんなことを言われるのは一生で一回あるか、ないかだ





それを断るのは少し申し訳ない





でも、何より





「、、どうぞ」






彼なら私の寄り道に最後まで・・・・付き合ってくれる気がする





それに彼のそばは不思議と落ち着く





他の誰かじゃなくて彼がよかった





じゃないとこんな告白みたいなものに乗らない





「じゃあ、よろしくね?スズちゃん」





「うん、よろしく」





これが私と隣街の王の初対面

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