第52話

エレベーターが到着し、手を引かれて部屋の前で鍵の開く音に、体が震えた。



扉が閉じ、鍵の閉まる音を合図に、また壁に押し付けられ、唇が塞がれた。



縺れるように靴を脱ぎ、抱き上げられる。



キスはずっと続いていて、荒い息と唇の触れ合う音と舌の絡まるいやらしい音が、耳を犯す。



ベッドへなだれ込み、唇が離れないままにお互いが服を脱がせ合う。



もどかしくて、仕方ない。



唇が離れ、肩を押されてベッドへ仰向けに倒れる私は、酸素を必死に求めて朦朧としながら虎牙君を見る。



「はぁ……虎牙っ、くっ……」



「一秒も待てねぇから……もう入れんぞ……お前も一回イっとけ」



濡らす必要なんてないのは分かっていた私は、ベルトを外す虎牙君を見つめながら、素直に脚を開く。



下着を横にズラし、虎牙君の昂りがゆっくり入ってくる。



ゾクゾクと背中が粟立ち、呼吸をするのも精一杯だ。



「あぁぁっ!」



「っ……締め過ぎっ、だろっ……くっ……」



「ぁ……ぁ……はっ……」



「いい顔してんなぁ……もうイったのか? はぁ……まだ半分しか入ってねぇぞ……」



入口を虎牙君の昂りが擦っただけで、体に電流が流れたみたいに私の絶頂を促してくる。



体をビクビクと跳ねさせて達している私に、虎牙君は容赦なく奥へと進んでいく。



「あぁあ……ぃまっ、ダメぇっ……」



「あ? イイの、間違いっ、だろっ……はっ……」



気持ちいいが重なって、波のように襲いかかる。



「ふぁあぁっ……あっ、ゃ、ぁ、ぁ……」



「おらっ……はい、った……はぁ……すっげぇ、中、熱っつ……」



ゆっくり呼吸をする暇もなく、虎牙君は腰を動かし始めた。



「やっ、あっ、はげ、しっ、あぁっ!」



「気持ちよさそうな顔してっ、中、締めてっ……っ、はぁ……俺のを奥まで咥え込んでっ、ぁ……熱いのくれって、うねってんじゃねぇかよ……」



耳を舐められ、囁かれ、また中を締め付ける。



「いっその、事っ……このまま、はぁ……んっ、俺の子、孕むか? ん?」



虎牙君の言葉に、顔を見て固まる。



「ふっ、満更でもねぇ顔すんじゃねぇよ」



「し、てなっ……あぁあっ!」



虎牙君の言う通り、少しそれでいいかもって、思ってしまった自分がいる。

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