第50話
恥ずかしくて、涙が滲む。
「っ、んっ、ゃ……ふっ、やぁ…… 」
出来る限りの力で抵抗する。
「っ、そ、そこまで嫌がんなくてもいいだろ……そんな嫌かよ……って……お前っ、泣いてんのかよっ……な、泣くなって、悪かったから……泣くな……」
少し拗ねるみたいな顔で不満そうにする虎牙君が、焦り気味に両手で私の顔を包み、唇で涙を拭う。
宥めるみたいに顔中にキスを落とす虎牙君が、優しく囁く。
「お前が嫌ならもうしねぇから……泣きやめ、な?」
行為が嫌なんじゃなくて、場所が嫌なのだ。
抱きしめられ、頭を撫でる手が優しい。
「ここはいっぱい人が、いるから……ぃや……」
小さく呟く私の髪を撫でる手が止まる。
「……ヤんのが嫌なんじゃなくて、か?」
そうじゃないんだと、首を横に何度も振って胸に顔を埋めた。
突然立ち上がった虎牙君に、そのまま抱き上げられる。
「ここじゃなきゃ、いいんだよな」
「え、あ、いや、その、そういう事でもなくて……」
言い訳じみた言葉を言う私の言葉を聞いているのかいないのか、私をだっこしたままの虎牙君はそのまま屋上を後にする。
「意見は却下。もうヤる気出ちまったから、拒否権はなしだ」
他の生徒の視線が刺さる中、虎牙君は私を下ろそうとしない。
「じ、自分で歩く、からっ……ねぇ、虎牙君っ……」
「黙って運ばれとけ」
こういう強引で何も通じない時の対処法を、琉依君に伝授されたから、ここで使ってみる。
「手っ!」
「あ?」
「こ、虎牙っ、と……手、繋いで……歩きた、ぃ、なぁ……」
虎牙君の歩みがピタリと止まり、私を見るブルーの瞳が見開かれた。
「こ、虎牙、君?」
「……琉依か……」
「へ? あの……んっ……はぁ、ぅンっ……」
降ろされたと思った瞬間、唇が塞がれる。
まだここは廊下で、放課後とはいえまだ少し人がいるのに。
「なんつーもん覚えんだよお前は……この場で犯されてぇのか……」
何でそんな事にと思い、怒らせたのかと虎牙君を見ると、口を押さえ、耳が真っ赤だ。
初めて見る虎牙君の照れ顔に、つられて私まで照れてしまう。
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