第45話

ソファーに座る私の足元に、虎牙君が座る。



自分で出来るって言ったのに、傷の手当てをさせて貰えなくて、大人しく座って虎牙君のお世話になっている。



濡れたハンカチで、傷に付いた汚れを落としていく。



ピリっと痛み、脚が逃げてしまう。



「んっ……っ……」



「エロい声出すなよ」



「だ、出してませっ……出して、ないっ……」



こちらを見上げる虎牙君がニヤニヤする。



最近、虎牙君がこうやってからかうみたいな事が多い気がする。



敬語になる癖がなかなか取れないのは、彼にとってからかう対象でしかない。



慣れないと。



「しっかし、ほっせぇ脚だな。ちゃんと飯食ってんのかよ」



「た、食べてるよ……っ……触り、方っ、ゃっ……」



「ん? 撫でただけだろ」



足首からふくらはぎを、虎牙君の大きな手がゆっくり撫でる。



「ぃ、いじ、わるっ、ばっかりっ……」



「意地悪? 馬鹿言え、可愛がってるの間違いだろ」



言って、虎牙君の顔が近づく。



自然と目を閉じる。



「ぇ……?」



鼻先にキスが落ちる。



「ん? 何だ? ここに、されたかったか?」



虎牙君の指が私の唇を、優しく一回つついた。



私の隣に腰を下ろし、虎牙君が挑発するみたいに片方の口角を上げる。



「して欲しいんなら、自分から求めて来いよ」



彼は、私が行かないはずがないと、確信している。



悔しいけど、もう私の体が彼に触れたくて、ウズウズしている。



立ち上がり、彼の脚を跨いで座る。



「えっろい顔しちゃって……」



言い終わるのと同じくらいのタイミングで、虎牙君の唇を軽く舌で触れ、唇で挟む。



「っ、ん……はぁ……こんな、エロいキス……っ、何処で覚えて、くんだっ……ンっ、よ……」



「んっ、ンんっ、ふ、ぁっ……」



夢中で虎牙君の唇を貪る私のお尻を、両手で掴んで立ち上がる。



脚を虎牙君の腰に巻き付け、腕を首に回してしがみつく。



その間にも、キスをやめる事はなくて、興奮は止まる事なく高まる。



「んっ、はぁ……お前、キスだけでイケんじゃねぇの? 顔トロけてんじゃん……可愛過ぎんだろ……」



虎牙君の言葉はあながち間違いではなく、本当にキスだけで達してしまえるんじゃないかと思えるくらい、お腹の奥が疼いてたまらない。



「腰すっげぇ動いてんぞ? キスイキ、試してみるか?」



言われ、頭がフワフワしている私は、考える暇すらなく一言「する」と虎牙君の唇に喰らいついた。

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