第41話

けど、その言葉は、新たな第三者によって遮られた。



「昼間っから公園デートですかぁー? 熊白くぅーん」



「あれー? 今日は仲良しの獣織君はいねぇのー?」



「俺等も混ぜてくんねぇかなぁー? おデート」



ガラの悪い男子学生が数人近寄って来る。制服がうちのじゃないから、他校だろうか。



琉依君が、私を背に隠すみたいに立ち上がる。



そして、小さな声で私だけに囁いた。



「俺が気を引いてる間に、走って逃げて。出来るね?」



「で、でも琉依君は……」



「俺はこんなん日常茶飯事で慣れてるから大丈夫だよ。俺結構強いんだよ」



首だげこちらに向けて、ウインクする。



その間にも、人数は増えていて、不安ばかりが増す。



「逃げてる時にもし万が一アイツらが追ってきたりしたら危ないから、呼べるなら虎牙呼んで。俺がいる間は、出来るだけ守るけどね」



何も出来ない私がいる方が、琉依君には足手まといだろうから、私がいない方がいいに決まってる。



私は従う事にして、ゆっくり後退る。



「数えるから、1になったら走って。振り返らないで、いいね。3……2……1っ! 走ってっ!」



私の足でどのくらい出来るかは分からないけど、自分の全力で地面を蹴って走り出す。



「女が逃げたぞっ! お前等行けっ!」



数人の足音が後ろに迫るけど、足を止めたら琉依君が私を逃がしてくれた意味がなくなってしまう。



振り返るな。走れ。全力で。



男の人の足に適うわけはなく、距離が縮むのが分かる。



怖くて、涙が滲む。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」



肺が潰れそうで、足が上手く動かないのを、無理矢理動かし続ける。



でも、やっぱり無理がある。



「あっ……」



腕が掴まれた拍子に足が縺れて転んでしまう。



「あー、ったくよぉ……手間取らせんなよ、このクソアマ……」



「ぃっ、あっ……」



髪を思い切り掴まれる。



「お前熊白の女なんだったら、獣織の事ももちろん知ってんな?」



怖くて、体が震える。



「黙ってねぇで、さっさと答えろよ、ダリィなっ!」



左の頬を思い切り平手打ちされ、視界が揺らぐ。



「獣織、ここに呼び出せ。抵抗したらどうなるか、分かるよな?」



いつの間にか出したであろうナイフで、頬を撫でられる。

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