第40話
落ちないように首にしがみつく。
琉依君は凄く楽しそうに、私を抱っこしながらなのに廊下を走る。
獣織君も琉依君も体が大きいけど、そんなに小柄でもない私を抱っこしながら、よくこんなに何もないみたいに出来るものだと関心してしまう。
学校から出て、デート初心者の私を、琉依君は色んな場所に連れて行ってくれた。
「ついてるよ」
アイスを食べる私の唇にキス。
「うん、甘い。隙ありってね」
無邪気に笑う琉依君を前に、怒る事も出来ずに笑ってしまう。
初めての体験ばかりに目が回るけど、楽しい。
だけど、どうしてもさっきの光景が思い出されて、複雑な気持ちになる。
琉依君に手を引かれ、公園のベンチに座らされる。
「疲れちゃった?」
「う、ううん、大丈夫っ。楽しいよ……」
「うーん、まぁそれは本当なんだろうけど、やっぱ、さっきの虎牙の事、気になってるんでしょ?」
言われてドキリとする。
「他の女にデレデレすんなーって、文句の一つでも言ってやればよかったのに」
「そ、そんなっ、わ、私にはそんな事、言う権利、ないから……」
ベンチに座る私の目線に合うように前でしゃがんで、琉依君は私の手を握ってため息を吐いた。
「ほんと、何処まで健気なんだろうねぇ、この子は」
片手で私の後頭部の髪を撫で、真剣な顔になる。
「そういうとこ可愛くて好きだけど、他の奴に対してってのがムカつくよね」
ゆっくり顔が近づいて、キスされると思った私の手が琉依君の胸を押し返す。
「ダメ? やっぱり、俺じゃなくて、虎牙がいい?」
「それ、は……」
そんなの、分からない。
私は、どうしたいんだろう。
「いい事教えといてあげる。断るつもりなら、もっとちゃんと拒まなきゃ駄目だよ。そうじゃないと、俺みたいな悪い奴に簡単に丸め込まれちゃうんだから」
「んっ、ンんっ……」
少し乱暴に唇を塞がれ、琉依君の胸にある手に力を込める。
何度も角度を変えて唇を塞がれ続け、私は抵抗をやめた。
獣織君にも言われたのに、隙だらけだと、ビッチだと。
本当にその通りだ。
私は、最低だ。
「はぁ……ねぇ、颯夏……俺にしなよ。俺ならちゃんとした関係になって君一人をちゃんと愛してるあげるから。俺を、選んでよ」
琉依君の何処か不安そうな表情と声に、私は口を開いた。
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