第36話
そして、優しく笑った。
胸が、大きく跳ねる。
何度も何度も、胸が激しいリズムを刻む。
顔に熱が集まって、でも目は離せなくて。
「マジで、変な女……」
顎を持たれて、獣織君の親指が下唇をなぞると、キスを予感して、期待して、体が熱くなる。
完全に、彼を求める体になってしまった。
それでも、嫌じゃなくて。
これは、好き、なのだろうか。
それとも、ただ、流されているだけなんだろうか。
恋愛経験はないし、男の人に免疫もない。
だから、分からない事だらけだけど、私は自分の気持ちの正体を知りたいと思う。
「あの画像、もうとっくに消してっから、逃げてぇなら、逃げていい」
言われて気づく。
そういえば、画像の事をすっかり忘れていた。
今の私には、画像は前ほど意味のあるものではなくなっていた。
「逃げねぇの? 怖いんだろ、俺の事」
「こ、わいかって言われ、たら……まだ、その、ちょっとだけ……。でも、私は貴方を、知りたいと、解りたいと、思っています……」
言って、地面に両膝をついて獣織君の脚の間に体を滑り込ませて少し近づいて、彼の膝に手をついて口づける。
触れるだけしか出来ないけど、唇が離れた時に、綺麗なブルーの瞳が見開かれて揺れ、それが凄く綺麗で、吸い込まれるようにまた口づけた。
「お前、弱ぇんだか強ぇんだか、よく分かんねぇな。やっぱ変な女だわ」
「そ、そう、でしょうか……」
「だから、つい構っちまうんだろうな……」
頭を撫でられてしまった。
優しい笑顔は、やっぱり心臓に悪い。
怖くて、たまに優しくて、可愛い人。
彼に翻弄されながらも、私はそれを心地よく感じていて。
このまま身を任せるのも、悪くないと思ってしまう。
「お前が逃げねぇって決めたなら、もう離してやれねぇけど、マジでいいんだな? 俺は自分のもんは誰であろうと触らせる気はねぇし、よそ見なんてしてみろ、閉じ込めて二度と俺以外を視界に入れられねぇようにする」
低く唸るみたいな声が、怖かったはずなのに、何故私は今、こんなに体を熱く疼かせているんだろうか。
「何でんなエロい顔すんだ……ふっ、可愛い奴……」
可愛いなんて言われて、喜んでしまうのだから、だいぶ私は重症だ。
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