第六章

第32話

〔獣織虎牙 side〕



拳に付いた血を見て舌打ちをし、夜の公衆便所で洗い流す。



転がる男達を見る事もなく、小学校からの腐れ縁である、熊白琉依と合流する。



「で、これからどうする? 街出てナンパでもする? 虎牙は喧嘩の後、女いた方がいっしょ?」



長年一緒にいると、お互いの事は大体分かるとは言うが、コイツの理解力、読解力は化け物並だと思う。



「何でもいい」



喧嘩の後は血が滾り、興奮が増すのは確かだ。



ただ、俺にとってセックスはただの欲を満たすだけの行為で、相手、女なんてただの“穴”でしかない。



だから、相手が誰だとか俺にはどうでもいい。



とは言っても、俺にも好き嫌いくらいはある。



公園から出た瞬間、胸の辺りに何かが当たる感触。



女が、後ろに転んだ。



色気のねぇ下着が見えて、顔を見る。



悪くはねぇと思った。



俺の加虐心を煽るような、簡単に捩じ伏せる事が出来る、か弱そうな女。



見下ろす俺を、完全に怯えた顔で見る。



たまらなくゾクゾクした。



コイツの泣いた顔が見てぇ。



この純情そうで、何も知らないって顔を歪ませて、ぐちゃぐちゃに汚したい。



女にそんな気持ちを抱いたのは、生まれて初めてだった。



想像以上に体の具合は極上で、相性も抜群ときた。



俺は女を脅して、柄にもなく脅しなんて手を使った。



恋愛感情なんてもんは全くないが、琉依までも女を気に入ったようで、自分から許した事とはいえ、いつものように女を優しく抱く琉依に、女も満更でもないようで、妙に面白くない。



コイツは、俺が見つけた獲物だ。



いくら琉依でも、渡さねぇ。



お仕置きと称して、初めて大人の玩具というものを女に使った。



乱暴に抱いて気を失い、動けないくらい疲れきった女が、俺を見て寝ぼけながら口にした言葉が、俺には衝撃だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る