第四章
第21話
ふかふかのベッドに沈んだ体が鉛のように重くて、体中が軋むみたいに痛む。
目だけが通常の動きをするけど、それすらもダルくて目を閉じる。
微睡みの中、ベッドが揺れた。
「それ飲んどけ。体ダルくても、そんくらい飲めるだろ」
投げられたであろうペットボトルの水を、目だけで確認して、また目を閉じた。
「ちっ……手の掛かる女だな」
ベッドの端で布団に包まる私から、獣織君は布団を剥ぎ取った。
ベッドの傍でしゃがんで、目線が合った。
まだボーッとする頭で、獣織君の顔を見つめる。
初めてちゃんと顔を、目を見た気がした。
「目……綺麗……」
よく見たら、目にブルーが入っている気がする。
光の加減か、たまにガラス玉みたいにブルーが光る。
一瞬目が開かれた気がしたけど、すぐにその目が見えなくなる。
唇が触れて、喉に水が流れて来る。
普段は乱暴で、今も面倒そうなのに、何でこんなに優しいキスをするんだろう。
よく分からからない人。
半強制的にシャワーに連れて行かれ、頭からお湯を被りながら、広い浴室の端で膝を抱えて泣く。
頭がだいぶスッキリしてきたせいで、昨夜の醜態を思い出して、涙が止まらなくて。
とにかく今は早く帰りたい。
彼から、離れたい。離れたいのに、体が言う事を聞いてくれない。
「お前、いつまでそうやってビービー泣いてる気だ?」
頭上から声がして、自然と体が強ばり、力が籠る。
「お前の為に言っとくけどな、流依の優しさはお前にだけ向けられてるわけじゃねぇよ? アイツは女全般に優しいんだから、間違っても自分にだけ優しい、特別なだなんて、勘違いすんな」
何故今流依君の話が出て来るのか、頭が追いつかなくて。
「俺は自分の所有物に手を出されんのは好きじゃねぇ。いくら流依であってもだ。次アイツに何か許したら、分かってんだろーな」
凄まれ、体は震えるのに、疲弊しきった私は、何処かおかしかったのかも知れない。
「そ、そんな、事、私に言われても……こ、こま、困りますっ……暴れたって、意味、なくてっ、力でなんて勝てないのにっ……」
私にどう逃げろと言うのか。
方法があるなら教えて欲しい。
「へぇー、口答えする元気、あんじゃねぇの……」
「ぁ、やっ……」
腕を掴まれ、膝立ちで浴槽に手を着く体勢にさせられる。
「その生意気な口が利けなくなるまで、お前の主人は誰なのか、もっとその体にたっぷり教えてやんねぇとなぁ……」
「いゃっ……やだ……やめっ……んああぁっ!」
「何もしてもねぇのに、はぁ……簡単に入口濡らして男を受け入れる淫乱の、癖にっ、んっ……嫌とか……全く説得力ねぇわっ……」
無理矢理挿入されて、それでも彼に慣れて来ている体は、悦んで彼を歓迎する。
「やっ、あぁっ、んっ、ぃや……んぁっ……」
「流依とのセックスはよかったか? ん? ただの穴のくせに、相手選んでんじゃねぇよ、クソビッチが」
後ろから激しく突き上げられ、罵倒され、涙が次々溢れて来る。
何でここまで酷い事を言われ、こんな乱暴にされないといけないのか。
それに抗えない自分に情けなさでいっぱいだ。
別れる時、獣織君はいつもの無表情で言う。
「流依もお前にご執心みたいだしな。流依に逃げてぇなら、勝手に抱かれてりゃいい。ただし、そのせいで俺との約束を蔑ろにしてみろ、体だけじゃなく、お前の全部をぶっ壊すから、覚悟しろ」
彼にとって、私の一人の人生を潰す事なんて簡単で、どうやったって、彼に勝てるわけはなかった。
「流依と俺、二人相手にいつまで頑張れるか、見ててやるよ、淫乱ビッチちゃん」
楽しそうに笑う獣織君が、いつも以上に怖く感じて、私は身を震わせるしか出来なかった。
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