第12話

行為後、保健室に残された私は泣く気力もなく、制服を整えて立ち上がる。



けど、やっぱり脚に力が入らなくて、床にペタリと座り込む。



「はぁ……疲れた……」



頭はボーッとするし、脚に力は入らないし、体と下腹部は痛いしで最悪な気分だ。



「最低男……」



呟き、床が綺麗だとか汚いとかどうでもよくて、今は横になりたくて。



でも、ベッドに寝るのは絶対に嫌だった。



床の冷たさが気持ちよくて、目を閉じる。



────ガラガラッ。



扉が開く音にすら反応するのが億劫で、私は近づいて来る足音にだけ耳を澄ます。



「あーあー、可哀想に……」



髪を撫でられ、ゆっくり目を開いていると、横抱きに抱き上げられているのが分かる。



ベッドに近づいている気がして、目を見開く。



「ベッドっ……やっ……」



声を絞り出して首を振りながら、抱き上げている人の首にしがみつく。



「おっとっ、危ねっ……。あー、そっか、そりゃ、嫌だよねぇ……ごめんね」



後頭部を撫でられ、優しさに涙が出る。



「ひっ、ぅ、っ……ふぇ……っ……」



「怖かったよね……もう大丈夫、大丈夫だよ」



泣きながら、しがみつく腕に力を込めた。



初めて会った時から、この人は優しい。



それが、どの女の子が相手でも、優しくするんだろう。



それでも、今の私には、この優しさがありがたかった。



「休めるとこ、他にあったかなぁー。家、帰るなら連れてくよ?」



「ここじゃないなら……どこでも……いいです……」



早くここから、離れたかった。



「了解」



優しい声で言い、彼は私の頭にキスをした。



知らない間に眠っていたようで、目を開けると知らない場所にいた。



だいぶ体のダルさもマシになり、体を起こすとオシャレな広い部屋に、広いベッドがある。



その見た事のないくらい広いベッドはふかふかで、シーツも肌触りがよくてつい無駄に撫でてしまう。



「あ、起きた? 体平気? お腹は?」



少し長めの髪を束ねて結い、制服じゃないからか、大人っぽく見える彼は、ニコニコしながら質問責めにして来る。



「まだ眠い? 眠いならまだ寝ててもいいよ?」



頭を撫でてふわりと笑う彼に、私はゆっくり口を開く。



「ここ、は?」



少し声が掠れて出しにくいけど、今一番気になる事を聞く。



「ここは俺の家。学校じゃ落ち着いてゆっくり眠れないだろうし、君の家は何か複雑そうだし? だから、勝手に連れて帰って来ちゃった。声枯れてる、お水あるよ」



ミネラルウォーターの蓋を空け、それを口に含んで目を細める彼の顔が近づくのを、ただボーッと見ていた。

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