第35話

声の方を向くと、さっきの小柄なショートカットの女の子がニコニコしながら、私の前に立っていた。



「初めまして、琉玖夜の彼女さん? 私一度会って見たかったんだよねーっ!」



手を握られ、ブンブンと上下に振られる。



「さっきもあなたの話しててさー、琉玖夜がもうノロケちゃって大変。よっぽどあなたが好きなんだねー」



妙に楽しそうに話をする人だ。



琉玖夜に気があるのかと思っていたんだけど、違ったのか。不思議な人。



「こら、理沙。お客様困らせない」



「たっくん。はーい、ごめんなさーい」



店長さんに頭を小突かれた女の子、理沙さんは口を尖らせて不満そうに、元いた場所に戻って行った。



さっきもって、私が見たあの優しい笑顔は、私の話をしてたから。



顔から火が出そうだ。



そして少しでも誤解していた事を、琉玖夜に心の中で謝った。



着替えに行ったのか、琉玖夜が見当たらないので、ドリンクを飲みながら琉玖夜を待つ。



「お姉さん一人? てか、可愛いね。めっちゃタイプなんだけど、俺の嫁さんにならない?」



「素敵なお誘いね。でも、私の彼氏は特別格好いいから、お兄さんじゃ無理かもよ?」



こんな冗談も言うような人だと、最近知った。



「へー……そんなにその彼氏にベタ惚れなの?」



「そうね。でも、彼はその倍私にベタ惚れらしいから、お兄さんの入る隙はないかも」



ニコリと笑って声の方を見て立ち上がる。



「いいね、そう言われたら……逆にめっちゃ欲しくなるな、お姉さんの事」



腰に回された手に力が入り、引き寄せられる。



「いつまでやるの? この設定」



「自分からやっといてなんだけど、終わりが見えねぇ……」



やり慣れていない感じが可愛くて、笑ってしまう。



「おまたせ。さて、帰るか」



「うん。ていうか……離してくれないと帰れないんだけど……」



抱き寄せたまま、一向に離す気配がない琉玖夜に、店の中という状況に、恥ずかしくなってくる。



「最近お前とシてないからか、ちょっとくっつくだけでやべぇな……めっちゃヤりてぇ」



熱のこもった目で見つめられる。



「コホンッ。あー、お客様、お店の中でのイチャイチャはご遠慮下さい」



「店長すんません。仮眠室借ります」



「あー……手短にねー……」



手を取られ、店の裏側に連れていかれる。



この流れは、まさか。



仮眠室と書かれた個室に入り、鍵が閉まる音が聞こえた瞬間、琉玖夜の唇が私の唇を塞いだ。



「んっ! んぅっ、ふ、ンんっ!」



「はぁっ……ン……」



乱暴なキスをされながら、簡易ベッドの方へ誘導される。



ベッドに押し倒され、お互いの唇を貪るようなキスが繰り返される。



「んっ……はぁ……たまにはこういうのもっ、ンっ、っ、いいんじゃね? めっちゃ興奮するっ……」



「りくっ、まっ、て、んんっ、ンっ……」



「待たねぇ……ほら、もっと口開けて、舌突き出せ……」



「はぁっ、む……ぅんンっ……」



おずおずと出した舌を強く絡め取られて、吸われると、ゾクゾクして頭が痺れる。



荒い呼吸でがっついている割に、ボタンを外す琉玖夜の手は落ち着いていて、優しい。



「待てって言う割に……ここすっげぇ濡れてるけど? 体は正直だな。可愛い……エロい体して、誘ってんじゃん……」



下着の横から指が濡れたそこを撫でると、体が撥ねて、気持ちいいと主張するようで。



「乳首ももうめっちゃ立ってて、こうしてコリコリするだけで、気持ちよくてたまんねぇって顔してる……マジで可愛過ぎ……」



指の腹で胸の突起を転がされ、爪で引っ掻かれたりする度、強請るように腰が浮いて揺れる。

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