一分間の英単戦争
ぼちゃかちゃ
英単投げ
ある、『それ』による視点。
シャッターの降りた商店街。夕日に照らされ、ただ赤く輝く程に死んでいる
制服を着た美少女が肩甲骨ほどまで伸びた黒い髪を揺らしながら歩いていた。片手で英語の単語帳を持ち無表情。
それでも明らかに浮いていた。鞄のキーホルダー、耳にはめたイヤホンのビビットイエロー、靴に刻まれたモノクロで簡略化されたイラスト、左手首の腕時計、滲み出る
それの手が震える。そして閉じられた。
数瞬。
それは投げられ宙を舞う。
しかし本はピタリと、本来いるはずの通行人の顔が見えなくなるほどの高さまで落ち、静止した。背を向けず、こちらを向く本の口が開く。
頬を掠める
少女の心は一つに決まっていた。こんなことは予想していたというように、無感動で決断を下す。
何一つ置いていかずに脇を走り抜ける。
すかさず
色の少ない商店街を抜け、走り続ける。
空に輝く星が一つ少女の目の前に着弾する。
20㎝よりやや大きいその国語の教科書を回収し振り返る。
襲い来る英単語、王のようにゆったりと近づく単語帳に堂々と向き直り少女は消えた。
手の中の書物が一閃、相対する書物と単語たちを真横に一刀両断する。
しかし、まるで聞かないというように少女を狙い続ける。
咄嗟に教科書の表紙で守る。
押し寄せる単語を止める。
教科書の悲鳴。もう駄目かと力が抜ける一瞬、少女は気づいた。
せき止められた単語はみるみる吸い込まれる。
最後の一つまで吸い込まれた後、少女は倒れた。
左手には紙の柔らかくなった単語帳と中身が赤く染まるほど書き込まれた教科書が握られていた。
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