【雪と羽 3/3 ─ 彷徨う羽根 ─】

 ──そして、雪哉がブラック オーシャンの仲間になってから、三ヶ月ほどたった頃……──


「雪哉っ……雪哉ッ……! ……」


 慌てているような緑の声が、家に響いた。

 何事かと思い、雪哉はすぐに緑の声の方へと向かった。


「緑っ……大丈夫か?! ……」


 雪哉は慌てて、緑へと駆け寄った。

 緑はガタガタと震えていて、顔色が悪い。体調が悪いというよりは、何かに脅えているような感じだった。


「……よかった……――」


「ぜんぜん、良くなさそーだぞ……何が『よかった』だ? ……大丈夫か? 何があったんだよ……」


「ううん。よかった……雪哉がいなくなっちゃうかと思ったわ」


「は?」


 緑がどうしてこんな事を言ったのか、分からなかった。

 ただ緑は、不健康そうな顔を笑顔に変えて『よかった』と言った。


「…………緑、何かあったんだろう?」


「ううん。何にもない。……――そうだ、そろそろ、夕飯作らないと……――」


 緑はフラッと立ち上がり、雪哉に背を向けて、階段を下りて行った。


 明らかに、緑の様子が可笑しかった。 情緒が不安定というか……普通ではなかった。


 ──これが、“ある過ち”を犯す、前兆だった。


 緑はきっと、何かを抱え込んでいる。そしてそれを、自分雪哉には言わないつもりだろう……──雪哉はそう思った。


 ──そうして緑を心配した雪哉は、緑の昔からの友人の元を訪ねた。雪哉が向かったのは、闇オークションの主催者、ブルーソードの元だった。


「誰かと思えば! ユキ! しばらく見ねぇーうちに、立派なヤンキーになったな!」


 誉め言葉か何なのか……──よく分からないセリフで、ブルーソードは雪哉を迎えた。


 ブルーソードがいなかったら、今の雪哉はない。それに、緑にも会えてなかっただろう。その恩義を込めて、最初、雪哉は深々と頭を下げて挨拶した。


「どうしたユキ?! 身体柔らかくしてーのか?! いやいやいや、お家でやってくれ(笑)!」


「…………」


 感謝の気持ちは、まったく伝わっていないらしい。

 ──けれどさておき、とりあえず、今は緑の事を聞きたかった。おそらく緑が心の内を話すなら、ブルーソードとルビーだ。雪哉はそのことを知っていた。


「ユキがわざわざ、俺を訪ねて来るとはな……相当な理由か?」


「……緑のこと」


「……“やっぱりな”」


 ブルーソードはやはり、何かを知っている様子だった。


「……──緑、家でどんな感じだったんだ?」


「何かに脅えてる。それで、よく分からない心配をしてる……顔色は良くないし……」


「……──ユキ、お前ももう、チビなガキじゃねぇから言っておくが……緑は元から“不安定”な奴なんだ。──正確に言えば、元からではないか……ある男と別れてから、緑は不安定な奴になった」


 緑がネックレスをくれた時、そんな話をしていた。……──幼い頃の記憶が頭に浮かぶ。

 そもそも、このネックレスは、初めは緑の元恋人のもの。あの時、緑はそう言っていた。


「その男がいなくなって、ユキにもまだ出会ってなかった時期、はっきり言って、緑は脱け殻だった。──緑はユキに出会ってから、また元気になり始めた。……けどな、時々、不安定になる」


「……緑は、どうすれば治るんだ?」


「治るというか……今回、緑があぁなったのには、理由があって……」


「理由、教えてくれよ」


「緑の友達が事故にあったんだよ。幸い、その友達は命に別状はなかった。また元気になれる。……けど、怖くて仕方なかったみぇーで……その時の恐怖をきっかけに、今、不安定に逆戻りしてんだ」


「…………」


「……不安定になると、毎回緑が話すのは、“あの男”のことだ。『いなくなっちゃった』って言って、泣くんだよ……──まぁルビー医者が言うには、『疲労も原因の一つだろう』って……──疲労で弱ってるところに、友達の件があって、余計なんだ」


 ──『雪哉がいなくなっちゃうと思って……』──緑の言葉を思い出した。自分の元からいなくなった恋人のように、雪哉もいなくなってしまうのではないか? ……不安定な緑は、そう錯覚して、脅えていたのだ。


「だからユキ、緑が落ち着くまで、傍にいてやってくれ。それが一番良い筈だ」


 雪哉はブルーソードに言われた通り、緑の傍に付いていてあげる事にした。


 泣いてばかりの幼かった自分を、緑は優しく包み込んでくれた。今度は自分が、緑を助ける番だと思った。


「……ただいま」


 雪哉は帰宅した。すると、緑が駆け寄って来た。


「雪哉ッ……帰って来てくれたのね……」


 緑は涙目になっていて、何かに必死そうだった。


「帰って来るよ……当たり前だろ?」


 緑の発言からすると、おそらく緑は、“雪哉が帰って来ない”と、そう錯覚して、また脅えていたのだろう。


「緑……体が震えてる」


「震えてなんてないわ……」


 明らかに、緑の体は震えていた。


「誤魔化すなよ。……俺、ブルーソードのところに行ってきたんだ」


「……──アイツ、何か言ってた? ……」


「全部聞いた。……友達の件も、それがきっかけで、今“不安定”なんだって」


「…………口止め、しとけば良かった……」


「「…………」」


 緑は身体の力が抜けたように、床に倒れ込んだ。


「緑ッ……大丈夫か?! ……」


「……大丈夫。……」


「……大丈夫じゃないな……」


 雪哉はスッと緑を持ち上げて、お姫様抱っこをした。とりあえず、ソファーにでも連れて行こうと思ったのだ。


「……いつの間に、私のこと抱っこ出来るようになったの? ……」


「当たり前だろ。もう高校だぞ」


「大きくなったのね……」


「…………」


 雪哉に抱っこされながら、緑は、雪哉のシルバーネックレスを弄っていた。──愛おしそうに、ネックレスを眺めていた。


「ソファーで休んでた方が良い」


 雪哉は緑のことを、ソファーへと下ろした。


「なぁ緑、俺はもうガキじゃない。だから、もっと俺を頼れよ」


「……でも私、平気よ? ……雪哉が思っているよりも、私は強いわ」


 緑は視線を合わせないまま、強がりを言う。


「緑は一人で、抱え込みすぎなんだよ……」


「一人で抱え込んでいないもの……──ルビーたちがいるわ」


「……俺もいるだろ」


「ダメよ」


「「…………」」


「……だって私は、あの日、アナタを守るって決めたの……そう誓って、このネックレスをアナタに渡した……」


 緑はうわ言のように呟いて、ネックレスをじっと眺めている。


「アノ人がくれた、ネックレス……――」


 緑はただ、ネックレスをじっと見つめる……──


「…………緑? ……」


 雪哉は心配そうに、緑を見る。


「あーあ……大好きだったな……」


 ──緑が呟く。同時に、涙が浮かんでいた。


「大好きだったの……ずっと一緒に、いたかったのに……」


 緑がようやく、素直な叫びを呟き出した。

 緑が弱い面を見せてくれたから、雪哉は嬉しく思う。緑の素直な気持ちを、このまま聞いてあげようとした。


「雪哉が私の元に来てから、私は、寂しくなくなったの。だけど、どうしてだろうね……時々こうやって、無性に寂しくなる事がある。アノ人が恋しくなる……──私には雪哉がいるのに、私って欲張りなのね……」


「欲張りじゃねーよ! ……緑がそう感じるなら、それは俺のせいだろ……」


「いいえ……私自身のせいよ」


「違ぇよ、俺のせいだ……──俺がソノ男よりも、緑をしっかり守れてねーからだ……!」


 雪哉も少し戸惑っていて、必死だった。

 緑が悲しむのは、自分にソノ男の代わりが務まっていないせいだと、そう感じた。


「緑、俺、こんな頼れねー奴で、ごめんな……──」


 “今まで、もっと緑に何かしてあげれた事があったんじゃないか“、とか……──“どうやったら、ソノ男の代わりになれるんだろう?” ……とか……──そういう事が、頭から離れない。自分の無力さを嫌った。


 気が付くと、緑のことを抱き締めていた……――


 姉のように、母のように、幼い自分を育ててくれた緑……──けどもう、どんな立場の人を抱き締めているのか、分からなかった。


 他人と他人が寄り添い合って、一緒に生活を始めて、約7年……──

 親と子にしては、近すぎる年齢だった。高校生になった雪哉と、20代の緑。一線が、果てしなく曖昧に感じた……──


「なぁ緑、俺はどうすれば良いんだ? どうすれば、ソイツの代わりになれるんだ……」


「雪哉はアノ人の代わりじゃない。けど雪哉は、私の心を癒してくれる、大切な存在……」


 ──“穏やかな雪のように、優しく降り注ぎ、心に空いた穴を、埋めてくれた存在”……──


「辛いくせに、良い言葉を言ってる場合かよ……──なぁ、俺に出来ることなら、何でもする。俺はソイツの代わりで構わない……」


「……でも雪哉……――」


 緑も困惑した。雪哉を代わりとして見たことなど、一度もなかった。 ──けれど今、否定しながらも、本当は嬉しかった。


 嬉しくて嬉しくて……今だけ、全てを忘れて、恋人の残像を、重ね合わせたくなった……──


 ──シルバーネックレスが胸元で輝く……──その輝きに吸い込まれるように……──頭が真っ白になる──


 ──緑は名前を呼ぶ。


 呼んだ名は、“雪哉じゃない”……――


 懐かしい名を呼ぶ緑……


 それを否定しない雪哉……──


 今宵は瞳をとじて……──愛しい人の残像を捜す──


 何もかも忘れて、熱いキスに酔いしれた。


 ──歪んだ愛……


 溶け出した体温──


 もう、止められなかった……



 ──遠い日の、夏の夜に、二人が犯した過ち……──



 ──親子のように、姉弟きょうだいのように、身を寄せ合いながら生きてきた二人……──

 だが不覚にも、一線を越えてしまった……

 二人の関係が、いびつなモノへと変わってしまった……


 ──普段の体と体の距離も、自然と近くなった。けれどだからって、どうもしなかった。

 けれど緑が不安定になると、決まって、雪哉は緑を抱いた。

 緑は雪哉にとって、恩人だった。感謝している。

大切な存在──……だから守りたい。安心させてあげたい。

 その気持ちは、幼い頃から感じていた。

 けれど高校生になった今、男としてのプライドのようなものもあった。その気持ちが要り混ざり、自分でもよく分からない。 ……姉のような存在だけれど、一人の異性として扱ってしまう時がある。


「私は雪哉に感謝してる。 自分が女になれる瞬間……何もかも忘れて安心出来るから……──でも、ずっとこの関係ではいられないわ」


「どうしてだ? 俺は緑の為なら……――」


「だって雪哉は、私のことを、好きじゃないでしょう?」


「何言ってるんだよ……好きじゃなかったら、こんなこと、しねぇーよ……」


「雪哉の言う私を“好き”って言うのは、“恋じゃない”。私には分かる。間違っちゃいけない」


 緑は雪哉を見ながら、悲しそうに微笑んだ。


「雪哉は優しいからよ……私のことを大切に思ってくれてるから、雪哉は、私を助けようとしたのよね? ごめんね……私のせいで、雪哉の人生を狂わした」


「辛そうな顔するなよ! 俺は緑が好きだ! ……感謝してる……一生かけて、恩返ししても足らねぇ……俺が緑を幸せにするから、何も心配するな……! ……」


「……――――?」


 緑はクスクスと笑った。

 なぜ『ホラね』と言われたのか、雪哉は気が付かなかった。


「……『ホラね』ってなんだよ……俺、何か言い間違えたか?」


「そうね? 間違えたわ」


「…………」


「『感謝してる』『恩返し』……──ありがとう、雪哉。それが雪哉の本心よ。──雪哉は私に、“恋”をしている訳じゃない。“恩返しをしなきゃいけない”、そう、思っているのよ?」


 ──否定出来なかった。

 自分でも、言われてみて、“そうかもしれない”と、思ってしまった……──


「ありがとう。──緑は、雪哉に出逢えて、とても幸せよ?」


 緑は雪哉を抱き締めた。あの日の“幼い少年”を抱き締めるように、優しく抱き締めた。


「この関係は、いつかは、終わりにしないといけない。だからいつか、雪哉に心から愛する人が出来たら、ちゃんと言うのよ? 緑は、心から喜ぶわ。そしてこの関係に、終止符を打つ」



 ──何が正しいのか?


 何か、過ちを犯したのだろうか?


 ……──だとしたらどうやって、感謝すべき、目の前の大切な人を、助ければ良かったのか……──


 ──この恩義が“恋”なのだと、錯覚していた。


 ──知っているつもりだった感情が、一気に未知の感情になった──



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 ──美しい鳩が舞い降りる……


 アノ人が、私が、雪哉が憧れた空を、自由に飛ぶ鳥。


 ──“どうか、アノ人が、雪哉が、今日も何事もなく、笑顔で過ごせますように……――”──


 ──美しい鳩に、毎日、大切な人の身を案じるの……――



*──*──*──*──*──*──*──*


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─────

 ブルーソードが絵梨に話したのは、ここまでだった。


「俺は緑に雪哉を任せたことを、後悔していない。──絵梨は、どう感じた? 緑に雪哉を任せたことを、どう思う? ……」


 初めて知った雪哉の過去。 驚いたこともある。自分まで、悲しい気持ちになったりもした。

 けれど、ブルーソードの質問に対しての返答は、絵梨の中で、すぐに出てきた。


「今の雪哉がいるのも、その過去のおかげ。──なら私は、緑さんに感謝する」


 ブルーソードは安心したように、笑顔を作った。


「さすがに人魚姫様だ」


 二人の会話に、区切りが付いただろう。──すると、その時……


 ─―ガッシャーーーン!!


 ものすごい音と同時に、絵梨たちがいる部屋の扉が、何者かによってブチ破られた。


―「逃げたって無駄だ!! 往生際が悪りぃんだよ?! 何とか言えや! コラッ?!」


 扉をブチ破って部屋に入ってきたのは、師走 霜矢だ。低い声を出して、酷い激昂状態だ。

 霜矢に追い詰められた男が、ブルブルと震えている。 その男とは、絵梨をオークションに出展した男だった。


「やれやれ、愉快だな」


 ブルーソードはニッと笑った。

 まったく愉快に思えない絵梨は、表情を引きつらせる。


 ──すると続いて、高野と月も、その部屋へと入ってきた。

 涼し気な表情で部屋へと入ってきた二人。だが、月の手には、ロープが握られていて、そのロープに、二人の男が縛られていた。

 この二人も、絵梨をオークションに出展した二人だ。


 その光景を前に、絵梨は更に引く……


高「おい師走、モタモタするなよ。さっさとソイツ、縛り上げろ」


月「そうそう! さっさと捕まえて、拷問といこうじゃないか?」


 高野と月も、完全にキレているようだった。


B「はいはい、分かったから? ──もう少しお行儀良く、ソイツらシバいてくれ。人魚姫様が脅えてるぜ?」


 ブルーソードの言葉に、ハッとする師走たち三人。どうやら三人は、まさかこの部屋に、絵梨がいるとは思っていなかったらしい。逃げる男を追って、偶然、この部屋へと辿り着いたのだ。


霜「人魚姫! 無事で良かった……すっ少し待ってて下さいね? コノボケを黙らせたら、きちんと挨拶しますから……」


 男の身体をねじって、バキバキバキッと嫌な音を響かせながら、霜矢が絵梨に向かって微笑んだ。


絵「…………──」


 衝撃のあまり、絵梨は硬直している。

 ……すると高野がスッと絵梨の目に、自分の手を添えて隠した。


高「おい月! お前何か喋ってろ! 生々しい叫びと効果音が聞こえねぇーように、テキトーに喋れ!」


月「無茶ぶりだな?! 話すことなんてねぇーよ! こうすりゃ良いだろう?」


 そう言って、月が絵梨の両耳を押さえた。


 ──そうして絵梨の目と耳が解放された時、先程の男も、ロープで縛られている状態になっていた。


霜「吐け! テメーらはどこのグループだ!? 答えろ!!」


 霜矢が男たちを問いただす。

 けれど男たちも、簡単には口を割らない。


高「目的はなんだ?」


 高野が、凄い形相で男たちを睨み付ける。

 男たちは冷や汗が止まらない。

 ……すると一人の男が、ソロソロと話し始めた。


「……ちがう……人魚姫を狙った訳じゃない。……人違いだったんだ……! ……」


 男が言った話は事実だ。嘘も偽りもない。そして尚且つ、『人違い』と言えば、少しは霜矢たちの怒りが和らぐかと思った。


月「誰と間違えた? 言ってみろ」


「……レッド エンジェルのお嬢様を捜しているんだ……! ……お前らには、関係のないことだろ?! ……」


 命乞いのように、必死に男は訴える。


霜「ならどうして、人魚姫をオークションにかけた?! 許さねーぞ!!」


「勘弁してくれッ……椿さんが……――」


 ──『椿』、言うつもりはなかったのだろうが、一人が口を滑らせた。

 そして霜矢たち三人は、『椿』と聞いて、ピンときた。


霜「“椿”……──柳の率いるチームだな? お前ら、“紫王”か?」


 男たちは黙り込むしかなかった。


高「『レッド エンジェルのお嬢様を捜している』と言ったな? なら、紫王はレッド エンジェル側ということか?」


月「確かに、そういう事になる……師走、コイツら、どうする?」


霜「必要な情報を吐かせてから、捨てるか?」


月「捨てるのか? 人質っつーのはどうだ? あっでもコイツら、下っ端だしな……」


高「下っ端を人質に取っても、柳は動かねーだろうな……」


霜「決まりだ。──情報を絞り出して、用済になったら、捨てる!」


 この時初めて、“下っ端で良かった”と感じる男たちであった。


 ──そしてこの時、男たちから聞き出した情報は、“どのチームが、ブラック オーシャンを狙っているのか”、等──

 ブラック オーシャンを狙っているチームは、大きなチームから、小さなチームまで、いろいろだった。その中でも特に有力なチームは、やはり、だろう……──


 ──こうして必要な情報を絞り出して、霜矢たちは、紫王の下っ端たちを解放した。


 ──そしてついに、霜矢たちは絵梨を助け出す事に成功したのだった。

 ──そして、雪哉から絵梨を任された霜矢は、この日から、絵梨の護衛となった──


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