第12話
「でもさぁ、小里さん」
「へ?」
同じクラスとはいえ、今まで何の接点もなかった私の苗字を、香月雅は覚えていた。さすが余念がないというか。どんな女子に対しても手を抜かない執着さえ感じる。
「……今、俺の悪口を考えてたでしょ」
「なんで分かっ、あ……」
しまった!
慌てて口を押さえるも、香月雅は「まぁいいけど」と流してくれた。
……いいんだ。
「それより。さっき小里さんが言ったワルい男って、俺の中で全然ワルくないんだけどな」
「へ?」
「むしろ――」
グイッ、肩を抱かれる。一気に近くなった距離をものともせず、香月雅は私の顔を覗きこむ。
「俺の方が百倍ワルい男だよ?どれだけワルいか、経験してみる?」
「……っ」
するわけ、ないじゃん。
出掛かった言葉を、なんと、香月雅が押し戻した。私の唇にキスするフリをして。
「――ッ。ち、近い」
「強情な小里さんには、言い方を変えようか」
ペロリと、自分の唇を妖しくなめる香月雅。それを間近で見せられると、無意識に上唇がピクンとはねた。
香月雅が自分の唇をなめただけで、まるで操られたように反応してしまうなんて……やっぱり、この男は危険だ。
はやく逃げなきゃ――!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます