第11話

「とりあえず座って。ね?」


「……話すことないよ。今度こそ私は、あなたのようなワルい男には引っかからないって。そう決めてるから」


「へぇ。俺みたいなワルい男が、君の周りにはゴロゴロいるの?興味あるなぁ」


(しまった)




遠ざけるつもりが、逆に好奇心をくすぐってしまった。


あれやこれやと別れ際のセリフを言っても「それよりさっきの話」と、振り出しに戻される。



どう回避しても、香月雅に邪魔され家に帰れそうにないので……仕方なく、自分の恋愛話を披露する。


だけど思い出すだけで嫌な恋愛も、そりゃあったわけで。話している途中、何度か言葉に詰まづいた。



香月雅にバカにされる、と思ったけど、当の本人は常にサッカー少年を見ていて。だけど、私の話はきちんと聞いているらしく「うん」や「それで」と。タイミングよく相槌を打った。




「っていうわけで。私は、もうワルい男とは付き合わないの。例え恋愛の知識が未熟な私でも、笑って受け入れてくれる懐の深い男子と、平和に付き合うんだから」


「へぇ。それで俺は、さっそく爪弾きにされたってわけだ」


(しまった……喋りすぎちゃった)




香月雅は聞き上手だ。この男が相槌を打つと、不思議と喋ってしまう。


こういう所に姫岡さんも依存しているんだろうか。……私は違うけど。

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