第28話
わかってるよ。妃響。
「悠妃」って名前を決めたのは
妃響だもんな。お兄ちゃんが決めた名前だ。
「悠妃は俺の。」
「あら、妃響の?うふふ。
早速、取り合いになっているのね。」
「誰が、渡すか。こいつに。」
妃響は、
俺の事を「父さん」と一度も
呼んだことは無い。
当然、朝妃も。
これが、父親の役目を果たして
こなかった、結果なのだと。
自分に言い聞かせている。
「妃響、お父さんよ?」
「…………ふっ、誰が。」
「もうっ、意地っ張り。」
梨絵子のことは、母さんと呼ぶのに
俺のことは「父さん」と呼んでくれない。
竜妃、雅妃、燈妃、煌妃は
呼んでくれるのに……
朝妃と妃響だけは呼んでくれない。
その事実が、時々苦しくなる。
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