第26話

「別の世界に飛んでないで戻ってこい、バカ妃愛。」



「飛んでないよ。」




現実からトリップして自分の世界に入ることは多々あるけど、あるけども!

そんなに何回もバカバカって言わなくても良くない!?



自分が本当にバカだって思っちゃうじゃん……バカなんだけどさ。




「ひとりで抱えすぎなんだよ、チビなのに。荷物は背負うものじゃねえ。

降ろすものだ。何個も何個も背負ったらいつか潰れる時がくるぞ。」



「……わかってる。」




いつか来るんだろうなって思ってる。




こうして、わたしが自分から頼れないから連れ出してくれるの本当は嬉しい。

素直になれなくて意地張っちゃうけど気にかけてくれるのは嬉しいんだ。





「で、どこか行きたいとこある?」



「え?海って……」




海に連れていくって言ったの妃響兄じゃん?ちがうの?



頷いてないけど強引に連れていかれるものだと思ってた。

わたしの気持ち考えてくれる……とか妃響兄に限って……ないか。ないな。




超強引に家から連れ出したんだし。





「蒼哉と朝妃とか竜妃帰ってくると思って。連れ出したんだよ、先に。

抜け駆けは許さねえよってな。」



「は?抜け駆けって……恋愛じゃないんだから、なにしてんの。バカ?」




何を争ってんのさ。



誰から誘われても断る気だったし……今出掛けてるのは不可抗力。

断り切れなかっただけで……。





「抜け駆けしたくもなるだろ、ちび。

16年だ、16年。生まれる前からちびのことは聞いてた、知ってた。

いつか一緒に暮らせる日待ってたのにさあ、おまえは―――……」





おまえは、なに?





わたし、お兄ちゃん達に何かした?

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