第25話

「今まで言ってこなかったけどさあ…

妃愛ってほんとバカ。アホ。頼れよ。

甘えてみろよ、兄貴たくさんいんだろ。」



「たくさんって……そういう問題じゃないんだよ。」




バカなのはわかってる。



「怖い」って思って逃げて、

思い出の海にしがみついてるんだって自覚はしてる。

いまさら、どう甘えていいか分からないし、「お兄ちゃん助けて」なんてもっと言えない。



心配してくれることも、申し訳なくて……泣きたくなって海に来るんだ。




そのループ。繰り返し。





「妃愛、死んでも楽になれねえぞ。

現実からは逃げれるけど、魂までは救われないと思うぞ。」



「え、何……急に。」



「ママと優くん、美咲さんの後を追うのは許さねえからな。

追うって言うんだったら全力で止める。

だから、ひとりで泣くな。苦しむな。」




後は追わないよ……いまはね。



いまは、強く思う時期ではないから。

大丈夫、まだ、落ち着いてるから。





「例え妃愛が俺を嫌っても、俺は妃愛のストーカーになるからな。

玖賀からは妃愛、逃がさないよ。」



「怖いって……冗談には聞こえないから、お兄ちゃんやめて。」





やめて。本気で怖いから。




蒼哉兄ならまだ冗談に思えるけど、妃響兄は実際に行動するから、怖いんだ。

怒らせてはいけないナンバーワン。





「そうなってほしくないなら、いつまでも逃げんな。向き合う覚悟を決めろ。」






遠回しに妃響兄は言ってくれていた。





「逃げるな」って。



俺は、妃愛が逃げても向き合う覚悟は変わらねえから、腹を括れって。

言われてる気がしてた。






今日は面と向かって言われるDay?

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