第22話

「……ん、わかった。」




" パパと一緒に行く "



そう、言える日……遠くない。



もう少し、パパ待ってて。

パパって……心の底から思えるように……もう少し時間をください。





***





「こんのっ、バカ妹!心配した!

携帯持たずに出かけるなアホ、バカ!

ひとりで抱え込むんじゃねえ!バカチビ!」



「うるさいっ!」





家に帰ってきた妃響兄は「アホ」「バカ」って言いながら家の中に入ってきた。



仕事と思って家に居なかったわけではなく、わたしが死ぬんじゃないかと思って

車、バイクを持ってる兄たち全員でわたしの捜索をしてくれていたらしい……。



そんなに、心配させてたんだ……って思ったら何も反論が言えなかった。





「チビなんだからひとりで何でもかんでも抱えて解決しようとすんなバカ!

おまえは人に頼るってことを覚えろ!

人はなんでもかんでもひとりで生きていけるほど、世の中甘くねえから。」



「……はい。」




バカとチビは余計だけど、妃響兄の言ってることは正論で。



わたしがこの10年間意地を張って、壁を作って、ひとりで抱えてきた。

辛かった海難事故の記憶を封印して、わたしは、玖賀家に馴染もうとした。




「ごちゃごちゃ考える前に行動してみろっつーんだよ!この、チビ。

一言、" お兄ちゃん、助けて " ぐらい言えるだろ?なあ?ひめちゃんよ。」




もう、脅しじゃん。



言えるだろ?ではなくて、「言え」って言ってるようなもんだし。





「あん?ん?聞いてるのかな?

ヒメカちゃん。お兄ちゃんの言ってること聞いてますか?」



「聞いてます。」




ちょっとめんどくさいのはパパ譲り。




お兄ちゃん達も基本、決めたことは揺らがない性格。

こういう大事なお話しの時は、お兄ちゃん達は絶対に意見を曲げない。

間違ったことは言わないから、いつも正論でぶつかり合ってるんだ……





そこから逃げてきたのもわたし。

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