第9話

こんな時だけ名前で呼ぶ桜都おとは、すごく女慣れしている気がして、よく分からない涙が流れた。


考えてみれば、さっきのがファーストキスだったのに…



「桜都の方が馬鹿だよ、詩楽うたとは何もない。」


「キスくらいで泣くな。」


「もう退いて。」



勝手に勘違いしてればいい、



私の上から重さがなくなるとソファへ移動して

縮こまり、時間が過ぎるのを待った。

走り疲れたせいで、すぐに眠ってしまった私に

リネンをかけ、もう一度キスする桜都に気付く事はないまま。





「すげぇ、詩楽の着暦…

お前の方がバカだっつーの、笑菜。」

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