第29話

「莉音、詩音。ここな。大切な場所なんだ。」



優音兄に連れられて、来た場所は

海が見渡せる、小高い丘。公園だった。


はじめて、来る場所だった。



「父さんが母さんにプロポーズした場所。

出会った海、別れた時の海、再び付き合いはじめた場所………なんだって。それから、俺と玲音の妊娠を告げられた場所。」



出会って、別れて、付き合って、別れて。


困難ばかりだった、父さんの人生。

父さんが生後5ヶ月の時に、両親が事故死。

5歳上の兄と、3歳上の兄とは離れ離れになった。

今、どこで何をしてるか知らん。生きてるのかも。


お父さんは、兄弟を知らない………。



「何かの報告がある時はこの場所。

母さんが、三つ子ちゃんを妊娠した時、ここで報告したんだって。」



僕、颯音、詩音。


僕達は、三つ子の予定だった。

妊娠中期に、颯音は亡くなってしまった。

子宮内胎児死亡……僕と詩音の命も危なかった。



颯音は自分の命を犠牲にして、

僕と詩音を助けてくれようとした。



「莉音、詩音。

俺と玲音もね、ここで報告を受けたんだよ。

中2だったかなあ…丁度…悠妃が生まれて、半年くらい経った頃。

朝妃と妃響がさ、悠妃可愛い可愛い言うからさ。

欲しいな〜ってお願いした。弟でも妹でもいいから、兄弟がほしいって。」



優音兄と玲音兄の、希望だったの……?



僕達は。お兄ちゃんの希望―――……?

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