第26話

「……ありがとう……。」



もっと、言いたいことはある。


今は、まだ気持ちの整理がつかない。

お父さんが亡くなって、大変な時に……

呑気に入院しているなんて。

病院に入院している場合ではないのに…


僕は、弱いから。

現実を直視したくなくて、逃げてしまうんだ。



「莉音。」


「………なに、優音兄?」



黙り込んでいた僕に、話しかけてくれる優しい兄。


辛い時だからこそ、人の優しさが嬉しい。

傍に居てくれて、心強い。



「気丈に振る舞える人は凄い。

だからといって、泣いてしまったり…

倒れてしまったり、してしまうことが、情けないわけではないよ。

受け止め方はみんな違うんだよ、莉音。

今は、お休みしなさいってお父さんも言ってるんじゃないかな?」


「………うん………お休みする……。」


「莉音、我慢しなくていいんだよ。

ここは、莉音の味方しか居ないから。

泣きたいなら泣いていいし、甘えたいなら甘えていい。今は恥ずかしいとか関係ないよ。」



うんっ。うんっ………ありがとう………


優音兄、ひいにい。ありがとう。




いつか、恩返しを必ず―――……

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