第5話

その情報も出雲汐里のことを少し知れば、誰でもが知ることができる。



友達もいなければ(と、勝手に思っている)、男も嫌いな女を落とすなんて、どう考えてもやりにくいだろ。



否定する俺たちを他所に樹は一人熱くなる。



「汐里ちゃんは俺たちみたいな庶民とはレベルが違ぇんだよ!女王は平民と話したりしねえだろ!」



女王って…。


好きな女を女王呼ばわりするのは、褒めてんのかよ。



樹の言葉に俺は呆れたように笑う。



「だいたいお前、話したこともねえのに出雲汐里の何がいいんだよ」



樹は俺の質問に目をキョトンとさせた。



「は?そんなの顔に決まってるだろ!」



当然とばかりに答える樹は、本気と書いてマジと読む程に真面目な顔つきだ。



顔って……。


それだけかよっ!



「汐里ちゃん程に可愛い女はそうそういねえ!」



熱く語り出す樹は、単純でピュアなやつで。



「…はあ、わかった」


「お、眞紘マヒロもついに汐里ちゃんの良さがわかったか?!」


「いや、お前がとんでもねえ馬鹿だってことがわかった。ごちそーさん」



水を飲んで、食べ終わったカレーの器の乗るトレーを持って立ち上がる。

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