第29話

私は真っ直ぐ家には帰らなかった。


誰かにこの不安を聞いて欲しい。


そう思ってケンに居場所を聞いて、ケンに会いに行った。


スマホの電源は切って。



「なるほどね。


ガクが純さんの後釜かぁ。


ノンちゃんの不安はよく分かるけど、俺らにしてみたら魅力的な話だな」


ケンはそう言った。



「私は絶対に嫌だよ。


ユズさんみたいに"待つ女"になんてなれない」



きっと鈴なら共感してくれたと思う。



「俺は喧嘩で上に行けるなら行きたかったけどな。


ガクほど強ければ1年でトップに行けると思うぞ?」


相談する相手を間違えた。



「ケンに話さなければ良かった。もう帰る」


私は立ち上がった。



「外で喧嘩はしても、ガクが帰る場所はノンちゃんなんだから許してやれよ」



男が言いそうなセリフに苛立つ。


「私は許せない。男の浪漫とかわからなくて良いもん。


またね、ケン」



久しぶりに実家に帰ろう。


トボトボ歩いて帰った。

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