第27話

そして私の手を握り一軒家のチャイムを押す。


インターフォンから返事はない。


でもすぐにドアが開いた。


「おう!ガク。


珍しく連絡してきたかと思えば俺をコマ遣いにするとは上等だ」


そう言うとガク君のおでこにデコピンをする。


社会人だろうか…オブラートに包んだとしても上品な人ではない。


夜なのにサングラスに迫力あるスーツ。


暴走族じゃなければヤクザなのかとも疑ってしまいそうだ。


高1でこんな人と付き合いがあるなんてガク君は何者なの⁉︎


「ホント悪い!


必ず埋め合わせはするから頼んだ。


あと、この子は…」


私の存在の説明に困っている事が伝わる。


「ガク君の友達の朝比奈 花音です!


こんな遅くに本当にすみません」


深く頭を下げた。


「ガクの女か。お前は女には甘いな」


「ノン、この人は純(じゅん)さん。


口は悪いけど、人間は良い人だから安心して」


そうしてガラの悪い純さんにピッタリのヤン車で私達は武縄へ向かった。


「純さん、ノンにあんま俺の事話さないで?


何も知らない純粋な普通の子だから」


"普通の子"…ガク君は普通じゃないみたい。


私と一緒に後部座席に座ってくれる。


手を強く握っていてくれるから、この猛獣の檻の中に入れられた子猫みたいな状況に耐えていられた。


純さんはガク君から私の事情を聞いてすごく急いで車を走らせてくれた。


…要するにスピードを出しまくったという事。


2時間もかからずに武縄の病院に無事に着いた。

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