第33話

けど目の前の冬馬がバンッと机に手をついて立ち上がり


「てめっ、万亀!

んな勝手が許されると思うなよ!?

空の机が一番後ろにあんのが見えんだろーが!

あれはなぁ、この俺がかっちゃんに言われて渋々昨日用意したんだぞ!

それを……」


言いかける冬馬をまるっきり無視して、万亀は先生ににっこり笑顔を向けながら涼やかに


「有馬さんの隣がいいです」


もう一度そう口にする。


「あ、ああ……じゃあ、まぁ、それで」


他に退ける理由も思い浮かばなかったのか、先生が戸惑いながらもそう了承する。


「おい!かっちゃん!」


冬馬がギャンギャン喚くのにも全く構わず、にわかにざわめき始めるクラスメイトの視線にも構わずに、万亀は一番後ろに用意された席まで歩いていって机を持ち、今度は私の横の席まで持ってくる。


元々私の横に座っていた女子に爽やかに微笑んで「ごめんね、ここ、いいかな?」と魔法の言葉を一言かけると、


「はぁ〜い♡」


何一つ嫌な顔せずに──むしろうれしそうに立って、ずりずりと机を後ろへずらしながら万亀に場所を譲り渡す。

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