第32話

「──万亀 幸右です。

よろしくお願いします」


爽やかそのものって感じで言って──万亀がにっこり微笑むと、クラス中の女子たちの間から きゃあ〜っと黄色い声が上がる。


クラス中の男子たちは金持ちの息子って事で(だと思う、たぶん……)万亀に興味津々。


クラスの雰囲気的には万亀の事を大歓迎、の運びだけども。


けど私は、私の一つ前の席で冬馬がますます不機嫌のオーラを出しまくってるのに気がついていた。


顔は見えないけど、オーラなんて見える訳じゃないけど、その背中からはすんごい圧を感じるのよね。


と、加山先生が「席は──」とクラスの一番後ろ真ん中に用意されてた空の机の方へ視線をやりながら言いかける──けど。


万亀はにっこり笑いながら、


「有馬さんの隣の席がいいです」


爽やかさ全快のまま、スパンとあっさりそんな事を言う。


これには加山先生も、クラス中の皆もぽかんとした。

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