第30話

担任の加山先生と、うちの・・クラスへ。


……マジなの?


私が目をまあるくしてナキリを見ていると、ナキリが冬馬を差し置いて私の方へ へらっとも にこっとも取れない笑顔を向ける。


そうして「瑠衣さん♪」と親しげに手を振って見せた。


いやいや、『瑠衣さん♪』じゃないでしょ。


加山先生が「こら、尾瀬!」と冬馬の方を叱る。


「人を指差すんじゃない!」


「だってよ、かっちゃん〜」


冬馬が言い訳がましく先生に──加山、だから冬馬はいつも先生を「かっちゃん」って呼ぶ──文句を垂れる。


その間にも、クラスの中ではざわめきが起こっていた。


「ナキリ?って、あの……?」


「うそ、イケメンなんですけど……」


「つーか今、有馬の事『瑠衣さん』って呼んでなかった?」


それら全部のざわめきを払拭させる様に──先生が教壇の前に立ってごほんっと大きく咳払い一つした。


「えー、新しいクラスメートを紹介する。

ナキリ コウくんだ」


言いながら──先生が黒板に文字を書く。


万亀 幸右


まんかめ……こうみぎ……?


──万亀ナキリ 幸右コウ──?

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