第29話
そんなのあの短い間で、しかも初対面で分かるもんでもないでしょうに。
疑問に思いつつも、私はあっさりと冬馬の問いに答える。
「もういいも何も。
校長に頼まれて校内を軽く案内してただけだから。
今頃はもう担任の先生と自分のクラスに向かってるんじゃない?」
言うと──何でかたったそんだけの話で、
「ふ〜ん、」
ほんのちょっとだけ不機嫌を緩和させた様に冬馬が言ってそのまま前を向く。
まったく、一体なんだっていうのよ?
と、そこで。
ガラッと教室の戸が開いた。
入ってきたのは担任の加山先生と、その後に続いて──
「んなっ!?」
たぶん思わず、なんでしょう、冬馬がガタッと席を立って先生の後ろについて教室に入ってきたその人物を指差した。
「てめぇ、ナキリ!!」
こらこら、人を指差すな。
しかも『てめぇ』なんて呼ぶのは失礼でしょ。
そんな事を心のどこかで冷静にツッコミつつ……でも、冬馬がそうする気持ちも、私にも分からないでもない。
『今頃はもう担任の先生と自分のクラスに向かってるんじゃない?』
さっき冬馬に自分で言った言葉が頭の中に反芻される。
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