第35話

「ま、待て!私はここに住むなんて一言も…!」


ダルが慌てたようにいってくるのに、俺は肩をすくめて横目でダルを見た。


「ダル。

行くあてねぇんだろ?宿を探せば金がかかるぜ。

俺がせっかくここに住んでいいってんだから大人しくそうしろよ。

タダで住まわしてやるぜ。

その代わり、俺のことはゴルドーと手先たちには内緒で頼む」


片目でウインク一つくれてやると、ダルが呆れたように俺を見返す。


「何を自分の家のように……。恩着せがましいにも程がある」


「細かいことは気にすんなっての。

いーからいーから」


「…………」


おうおう、ダルのやつ、真面目だなぁ。


黙り込んじまったぜ。


俺が頭の後ろで手を組んだままダルの返事を待っている……と。


しばらくの沈黙の後、ようやくダルが一つ息をついた。


「──分かった。そうさせてもらおう」


その答えに俺はにやりと笑う。


最初から素直にそーいやいいんだよな。


まったくもったいつけやがって。


「──じゃー、ま、よろしくな、ダル」


俺が言うと……ダルがふっと一つ息をついて「ああ、よろしく」と返したのだった。


この出会いが──後々とんでもない事件につながることになるとは、俺はまったく全然予想だにしなかったのだった──。

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