第35話
「ま、待て!私はここに住むなんて一言も…!」
ダルが慌てたようにいってくるのに、俺は肩をすくめて横目でダルを見た。
「ダル。
行くあてねぇんだろ?宿を探せば金がかかるぜ。
俺がせっかくここに住んでいいってんだから大人しくそうしろよ。
タダで住まわしてやるぜ。
その代わり、俺のことはゴルドーと手先たちには内緒で頼む」
片目でウインク一つくれてやると、ダルが呆れたように俺を見返す。
「何を自分の家のように……。恩着せがましいにも程がある」
「細かいことは気にすんなっての。
いーからいーから」
「…………」
おうおう、ダルのやつ、真面目だなぁ。
黙り込んじまったぜ。
俺が頭の後ろで手を組んだままダルの返事を待っている……と。
しばらくの沈黙の後、ようやくダルが一つ息をついた。
「──分かった。そうさせてもらおう」
その答えに俺はにやりと笑う。
最初から素直にそーいやいいんだよな。
まったくもったいつけやがって。
「──じゃー、ま、よろしくな、ダル」
俺が言うと……ダルがふっと一つ息をついて「ああ、よろしく」と返したのだった。
この出会いが──後々とんでもない事件につながることになるとは、俺はまったく全然予想だにしなかったのだった──。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます