第34話

簡単に考えて、言う。


何でこんなこといきなり思い付いたのかは我ながら謎だった。


ダルに剣鞘で頭を打たれたから、たぶんそん時に頭をおかしくしたんだろう。


それに──ふと思ったんだ。


──もしこのままここで別れてから…ダルがふと思い立って、ゴルドーの野郎に俺のことをチクったりなんかしたら……。


そう、


『ああ、リッシュ・カルトなら女装してこの辺りをうろついていたぞ。

なんなら私が捕まえてこようか?顔も覚えている。

賞金は一億ハーツ、なんだろう?』


なんてゴルドーの奴に言い出したら。


んなゾッとする展開にはしたくねぇもんだ。


だったらこっちだってダルの動きを把握して、ヤバそうになったらズラかるほうがいい。


俺の言葉にダルが「さっきから思っていたが、ダル、って…。」と別のところに反応しつつ、俺を見る。


俺はにへら、と笑ってやった。


「ま、男二人だ、気楽にやろーぜ、ダル。

あ、ちなみに言っとくが、俺のことはちゃんと“リアちゃん”って呼べよ。

あとゴルドーの野郎とその手下どもには俺のことチクんなよ」


ハッキリと言っておく。


それから俺は立ち上がって歩き出す。


「部屋はてきとーに割り振ろーぜ。

ま、とりあえずさっきの“若奥様の部屋”は俺がもらっとくぜ。

服やら化粧やら、わざわざ他の部屋に持ってくのもバカみてぇだからな。

それから──」

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