第33話

聞いてくる。


俺は頭を両手で押さえたまま顔だけでダルを見上げ、眉を寄せた。


「ああ?……まあ、カルトって名はこの辺じゃ確かに珍しいけどよ…。

俺、身内とかいねぇから、たぶんそいつとは全然カンケーないぜ。

この名前だって気づけばそう名乗ってたってだけの話だしな」


言う。


実際そうだ。


物心つく頃にはもう俺は一人で生きてた。


両親もクソもない。


どこかの誰かがある程度までは育ててくれたんだろーが、その記憶もねぇ。


名前もその辺のどっかから取ったんだろうと思う。


覚えてねぇけど。


俺がいうと、ダルが「そうか」と一言いって考え深げに自分の顎に手をやる。


俺もその様子に頭から両手を離してダルを見上げていた──が。


ふと思い立って、ダルへ向かって声をかける。


「なあ、おい。

ここで会ったのも何かの縁だしよ、お前も俺も、ここに住んじまわねぇか?」


ふとした思い付きで言ってみる…と、ダルが二回ほどゆっくりとまばたきをして……


「…………はぁ?」


あんまり意外だったようで、返してくる。


俺は頭の後ろに手を組んで言う。


「だって俺、家ねぇし、ダルもそーなんだろ?

ここにゃ誰も住んじゃいねぇんだし、ちょっとくらい間借りたって問題ねぇだろ。

ま、お互いこっから離れたくなるまでさ」

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