第32話

そう簡単に手に入るんなら最初から借りたりしてねぇっての。


そんな俺の考えを読んだのか、ダルは言う。


「とにかく少しずつでも働いて稼ぐことだな。

ところで──」


ダルがいいかけて──俺を見る。


じっと俺を見て、何かを聞こうかどうか、迷ってるみてぇに見えた。


なんだぁ?


俺もいぶかしんでそっちを見ていたが……。


はっ!まさか…!


俺はぞわっとしながら大きく後ずさった。


「俺があんまりかわいいからって襲おうってんじゃ……!」


いいかけた俺の頭に。


ガスン、と強烈な剣の鞘の一撃が降りかかった。


「う、おおおおぉ……!

いってぇ………!」


思わず頭を押さえてその場でうずくまる。


ダルが顔を真っ赤にして怒鳴った。


「このバカ者が!何で私が!!」


けど、俺の耳には半分くらいしか入らなかった。


「くううぅ……!」


歯を食いしばって声を上げた俺に。


ダルがフンッと鼻で息をついた。


なんだよ、冗談の通じねぇやつだなあ!


ダルは言う。


「──私が聞きたかったのは、カルトという名のことだ。

この辺りではあまり聞かない名だが、私の知り合いに同じ“カルト”という名を持つ男がいた。

まさかとは思うがお前の身内か?」

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