第31話
俺にしちゃ、そっちの方が謎だぜ。
ダルは──…一瞬、そこで黙りこんだ。
ありゃ、こいつはけっこーな訳ありか?
なんて思ってると。
「──まあ、そうだ。ここの住人でもない。
お前と同じように、偶然ここへ来た」
「へ~、なんか妙な縁だな」
偶然こんな謎の家に、偶然ほぼ同じ時間に入って、偶然出会う。
どうやらダルも俺も訳ありで──。
なんだか本当に妙な縁だ。
なんて考えてると。
それで、とダルが聞いてきた。
「一億ハーツの大金、どうするんだ?
どうやらこの辺りでは大勢の人間がお前の命を狙っているらしいぞ?」
ダルが芯を突いてくる。
俺ははぁ~っと苦く溜息をついて、カシカシと頭を掻いた。
「──わかんねぇ。まったく参ったぜ。
まさかマジで命狙われるなんて考えてなかったしよ……。
とりあえずほとぼりが冷めるまでこのかわいい女の子姿で逃げて──逃げて、逃げる!」
自分を鼓舞するように言い切ると……ダルがいう。
「だが、いつまでもそうするわけにも行かないだろう。
一生女装して過ごしたくなければ、どこかで金を返さなければ」
言われて……俺は思わず口を尖らせる。
そうは言ったって、一億ハーツなんてどうすりゃ手に入るんだよ。
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