第30話

「──飛行船だよ。飛行船。

一億ハーツで、買い戻せるはずだった」


自分でも思いもよらず、真剣な口調になっちまった。


俺ははっとしてまたいつものにへら笑いに戻る。


あぶねーあぶねー。


俺のイメージが崩れるとこだぜ。


「な、な~んてな。

ま、一億ハーツも消えちまったし、ゴルドーと手先には追われるし、指名手配だし、今じゃもう取り戻すのなんて無理なんだけどな……」


へ、へ、へ、と笑ってみせる。


ダルならきっとため息をつくか、バカ者を見るようなあの呆れた目をするか、とにかくさほど気にはかけないだろうと思った。


けど、だ。


ダルはじっと俺を見る。


すみれ色の、真実を全て探っちまいそうな目の中に、慌てた俺の姿が映った。


ダルは言う。


「──無理かどうかは、やってみなければ分からない」


さらりと、そんなことをいう。


俺は逆に慌てちまった。


「はっ、はは…。

無理だっての。

とりあえずまずはゴルドーの手先をどーするかだよ。

つーか俺のことより、だ。

そーいうお前はどうなんだよ?まさかここの元住人って訳でもねぇんだろ?

俺と同じで偶然ここに紛れ込んだのか?」

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