第29話

◆◆◆◆◆


「…………と、いう次第でして」


俺が全ての訳を説明すると…ダルが、信じられないくらい愚か者を見る目で、未だ女装姿のままの俺を見る。


きれいになった室内の、あのワイン棚のあるリビングに、二人とも向かい合う椅子に座ってのことだ。


「一億ハーツを、たったの五時間で……しかもギャンブルで使い果たしたのか。

どれだけバカなんだ」


とはダルの第一声。


俺はえへ、とかわいらしく誤魔化した。


「あん時はさ、もうちょい金を膨らませたかったんだよ。

普段、俺ってツイてるしさ。あん時だけだよ、あんなにツイてなかったのは。

ありゃ、呪われてたね」


俺がへらへらしながら言うと、ダルが、バカ者にやるように片手を自分の額にやって、


「~もういい」


とあきれ返ったように言ってくる。

そうして少しの間を置いて、聞いてくる。


「そもそも、どうして一億ハーツなんていう大金を借りたりした?

普通に生活する分にはそれほどの大金は必要なかったろう」


根本的なところをついてくる。


脳裏にふわっと、当初の目的が思い出された。


俺は普段、そんなに自分のことを話すことはないんだが……このときは、何故かすんなり、話しちまった。

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