一章出会い

第11話

── 一年後……。


「おい!あっちに逃げたぞ!」


「追え!逃がすな!!」


グラサンに黒いスーツ、ついでに揃いも揃ったオールバックの髪の男二人が、通りをバタバタ駆けて行く。


俺はそれを寂れた鉄階段の影に隠れたままやり過ごし、ふーっと深く息をついた。


そうして少し長くなっちまった金茶の前髪を軽くかき上げ、顔をしかめ呟く。


「~まっずいよなぁ、俺」


一億ハーツなんて大金を極悪金貸しゴルドーに借り受けたのはもう一年前。


そいつをもうちょい膨らませよーとギャンブルに手を出したのが全ての誤りだった。


一億ハーツはたったの五時間でゼロになり、俺は全てを失った。


そこからどーにかこーにかやっては来たが、一億ハーツなんて大金がそうそう簡単に手に入るわけもねぇ。


仕方なく逃げることに決めたのは良かったんだが。


俺はくしゃりと、町に貼られていた出来の悪い紙質のポスターを懐から取り出す。


くっそぅ、と悔し紛れに声をあげた。


そこに書かれていたのは、俗にいうイケメンなこの俺のセピア色の顔写真と、黒いインクで書かれた文字。


すなわち──



指名手配


リッシュ・カルト 17才


生死問わず



そして──



報償金───一億ハーツ!!!

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