第30話



……怒ってない?



「、」




その表情に、ほっと安堵の吐息を漏らす。





「お前みたいな奴が、こんな所に二度と来るな。」



「え?」



「さっさと帰れ。」



冷たい声だった。




「さっきので、懲りただろ?」



「っっ、」



「…夜の繁華街は危険だ。」




私に視線を向ける事なく、天野さんは最後にぼそりと呟く。



「っ、!」



淡々とした天野さんの声に、私の肩がびくり跳ねた。





慌てて見上げれば、天野さんの瞳は未だに人混みに視線を向けたまま。





それでも、私に言っているんだろうと思う。

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