日常・警告

第28話




「……、そうか。」




私の返事を聞いた天野さんは、ポケットに手を入れ煙草を取り出すと火を付け、口に含んだ。



香る、紫煙。




「…お前、名前は?」



「え……?」



……な、まえ?



「…………。」




天野さんの問いに、私は口を噤む。



なぜ?




さっき人と同じで、ナンパなのかとがっかりとした気分になるが、見上げた天野さんの瞳は普通で。




“欲望”の光なんて見当たらなかった。




「……。」



「……。」




私達の間にだけ奇妙な沈黙だけが流れる。




口を閉ざした私を、天野さんは急かすでもなく、ただ力強い瞳で見つめてた。




「……莉茉りま



ぽつりと、自分の名前を呟く。




水瀬莉茉みなせりま





―――それが、“あの人達”に付けられた私の名前。

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