そして、約束の日。
第10話
それから三日後。
「おかえりなさいっ」
いつものように仕事から帰って来た母を玄関まで出迎えた遥に、母は思い出したというように手を打つと、突然
「……?どうしたの?探し物か何か?」
「遥にね、お土産があったんだよねー」
「おみやげ?」
何だろう?と、首を傾げていると。
「あった、あった。はいっ。これっ」
母は鞄の中から、とても小さな紙の小袋を取り出した。
小さくて薄い、カードのようなものが中に入っている。
「ありがとう。でも、これなぁに?」
受け取りながらも疑問を口にすると、母が笑いながら説明してくれる。
「それ、遥が好きそうだなって思ってさ」
手の中にあるその袋を指差す。
「今日ね、あるお客さんが入院しちゃったんで会社の人達と数人で、その人のお見舞いに行ってきたの。その時に前もって私が花を買いに行ったんだけど、その花屋さんでおまけに貰ったのよ」
「おまけ?」
話を聞きながらも、袋の中からそのカードのようなものを取り出してみる。
すると……。
何と、出てきたのは押し花で作られたしおりだった。
「えっ?これ……」
花の種類は違うものの、大きさや付けられたリボン等、ユウくんに貰ったしおりと殆ど同じつくりをしている。
「綺麗でしょう?遥、花好きだし。花束は皆で出し合って買ったんだけど、おまけのことを話したら皆がこれは持って帰って良いって言うから、貰ってきたの」
「それっ!どこのお店っ?!」
翌日。
学校を終えると、遥は早々に自宅の最寄り駅まで戻って来ていた。
今日朋ちゃんは用事があるとかで、いつものようにお茶出来なかったけれど、少し確かめたいことがあったので丁度良かったと思っていた。
駅の改札を抜けると、家へと向かういつもの道から僅かに外れて、駅前の商店街へと足を向ける。
そろそろ夕暮れ時。商店街は混み合って来る時刻ではあるが、まだ歩きにくいという程でもない。
遥は歩きながら制服のポケットから、小さなしおりを取り出した。
昨夜、母に貰った物だ。
「えっ?買ったお店?駅前の商店街にある花屋だけど……」
「花屋さん、あったっけ……?」
あまりその商店街を歩いたことがなかったので、イマイチどの辺りにあるのか分からない。
「ガードが続いてる通りの、だいたい真ん中辺りかなぁ。確か、駅側から入ると左手にあって……。あ、隣に薬局があったわよ」
母が教えてくれたのを思い出す。
(隣に薬局……。薬局……)
すると、遠くに薬局の看板が見えた。その奥に花屋らしきものも発見する。
(あった!あそこだっ)
ゆっくりと目的の店まで近付いて行く。
確かめたいこと。それは、あのしおりが他にもある売り物なのかどうか……ということだった。
これはユウくんに貰ったものと、どう見ても同じものだ。だから、もしかしたらユウくんもこのお店で買ったのではないかと思ったのだ。
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