第46話
「うん。その中学は県内でもガラの悪い奴が多くてわりと有名な学校だったんだ。だから…という訳でもないんだけど、僕は転校出来てラッキーだったかも」
そう笑って、石原は胸を撫で下ろす仕草をした。
その話を「へぇー、穏やかじゃないねェ…」とか、呟きながら聞いていた長瀬が、今度はワザとらしく険しい顔を作って言った。
「でもさ、実際に呼び出されて、その後冬樹チャンはどうなっちゃったワケ?」
長瀬の冬樹に対しての呼び名は、すっかり『冬樹チャン』に定着してしまったらしい。
(何か、面と向かって『ちゃん』とか付けて呼んだら、本気で怒られそうだな…)
…と、雅耶は話題とは無関係な事を考えていた。
「うーん、どうなったんだろう?上級生との話は、あまり詳しい情報は入って来なかったから…。でも、特別…喧嘩して大怪我したとか、そういうのは無かった気がするよ」
「ほー…。実は、上級生の不良どもも蹴散らして、後々影の番長とかやっちゃってたりして…」
少々悪ノリ気味の長瀬の言葉に。
「いや、流石にそれは無いと思うよ」
雅耶はとりあえず否定をした。
「うん。野崎くんはそういうタイプじゃないと思うよ」
石原もそれに同意する。
二人に速攻突っ込みを入れられて、長瀬は「あはは…」と、乾いた笑いを浮かべると、
「やだなー、冗談に決まってるじゃないのー」
…と、おちゃらけてウインクをした。
(冬樹は、そんな奴じゃない…)
雅耶は遠く、冬樹の後ろ姿を眺めながら思った。
引っ越した後のことは、わからないけど。
きっと、沢山の変化が冬樹にはあったのだろうとは思うけれど。
『根本的なものはそう変わらない』
清香が言ってくれたように、そうであって欲しいと思う。
そして…。
ピー…という、前半と後半のメンバー交代を知らせる笛の音が鳴り響き。
雅耶達は立ち上がると、グラウンドの中央へと歩みを進めた。
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