第39話
怪訝そうに振り返った冬樹の顔を見て、確信を得たようにその人物は笑顔を見せた。
「やっぱりそうだっ!お前、冬樹だろっ?」
人懐こい笑顔。
この顔には見覚えがあった。
(もしかして…)
「俺だよ!俺っ!!雅耶だよ!!」
「まさ…や…?」
(やっぱりか!!)
衝撃で固まってる冬樹をよそに、雅耶は嬉しそうに話を続けた。
「スゴイ偶然だなっ!まさか同じ学校になるなんてっ。こないだ駅でお前見かけてさー、まさかと思ったんだよっ」
若干興奮気味で、まくし立てるように話す雅耶を前に、冬樹の頭の中では自問自答が繰り返されていた。
(何で雅耶がここに…?いや、同じ制服着てここにいるってことは、この学校の生徒ってことだよな…。でも、こんな偶然って有りなのかっ?そりゃあ…こっちに戻って来た以上は、雅耶にもいつか会いたいとは思ってたけど…まだ、心の準備が出来てないって…。…それにしてもデカいな。180はあるんじゃないか??どうやったら、そんなに背が伸びるんだ…?)
半ばパニック状態である。
だが、表面上は瞳を大きく見開いている程度で動揺している様子はみられなかったりするのだが。
そんな時。
「おっす!雅耶っ!!何やってんの?何組だった?」
雅耶の知り合いらしき人物が、雅耶の後ろから声を掛けてきた。
「あ、長瀬!おはよー」
雅耶がそちらを振り返り、自分に背を向けたと同時に、冬樹は条件反射的にその場から立ち去っていた。
後々気まずくなることは分かっていたが、そんなことはどうでも良い。
とにかく、気持ちを落ち着けたかった。
「あれっ?冬樹…?行っちゃったのか…」
長瀬と挨拶を交わしているうちにいなくなってしまった冬樹に、雅耶は少々気落ちしながら昇降口の方を眺めた。
(待ちくたびれちゃったのかな…。悪いことしたな…)
その様子を見て、長瀬がニヤリと笑った。
「あれー?雅耶クン。なになにー?入学早々振られちゃったのかにゃ?」
相変わらずのツッコミに、雅耶は大きく溜息をついた。
「あのなー…。馬鹿なこと言ってないで、ほら…俺らもクラス見てこようぜ」
「ほーい…」
そうして名簿が掲示してある群れの中へと歩みを進めた。
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