第33話
「あっ!!テメーッ西田!!」
あたふたと逃げていく眼鏡の男は、西田という名だったらしい。
男達は大事な金づるを逃して、一気に殺気立った。
「テメェ…ナメた真似しやがって…」
「俺達をバカにしたらどうなるか、思い知らせてやるぜッ」
「おっと!」
突然、路地から飛び出してきた男にぶつかりそうになって、ある人物は足を止めた。
飛び出してきた眼鏡の男は、妙に慌てた様子で、頭だけ下げるとそのまま人混みの中へと駆けて行ってしまった。
その様子を呆然と見送っていたが、ふと…その路地裏にまだ数人溜まっている事に気が付く。
雰囲気で察するに、何だか揉めている事だけは分かった。
(何だ?喧嘩…か?それともイジメ…?)
傍観しているうちに、いよいよ殴り合いへと発展する。
どうやら一人の少年に対し、三人で取り囲んでいるようだ。
(何にしても3対1とは卑怯な…)
それも、一人で応戦している少年は、三人の男達に比べて随分可愛らしい感じの少年で…。
(いや、でもいい動きしてるな…)
ゴツイ男の重そうなパンチを上手く受け流すその動きはなかなかだ。
だが…。
(ん…?あれは…)
その少年の顔がよく見えるようになって、思わず固まった。
(…冬樹…?冬樹じゃないのか?)
冬樹は、思いのほか苦戦していた。
ある意味、喧嘩慣れしている冬樹ではあるが、流石に自分よりひとまわりもふたまわりも大きな奴の力は半端ではなく。
それが、三人相手とならば尚更だった。
持ち前の瞬発力を発揮しようとも、狭い路地で三人に取り囲まれていてはどうしようもない。
「くっ!!」
一人の男のパンチを掌に受けて、その腕を捻って封じているその隙に。
もう一人の男が、冬樹の背後から叩きつけるように両腕を振り下ろしてきた。
「あぶないッ冬樹!!」
その突然の声に目を見張った瞬間だった。
冬樹の背後にいた男が、ドカッという鈍い音とともに地に倒れ込んだ。
(え…?だ…誰…?)
足元に倒れ込んで気絶しているその男を見て、冬樹は驚愕した。
一撃でやっつけたその鮮やかさは勿論のこと。
(今…確か、オレの名前…?)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます