第31話
(少し、歩いてみるか…)
気を取り直して、駅前の繁華街を散策してみることにする。
繁華街は、多くの人で賑わっていた。
子どもの頃は、あまり歩いたことのない裏通りに入ると、最近流行のお洒落なカフェやレストラン、カラオケ店などが数多く建ち並んでいた。
探検も兼ねて、それらの店先に貼ってある求人募集などを何気なくチェックしながら冬樹が歩いていると、ある路地に差し掛かった時、奥から不穏な声が聞こえてきた。
「やめてくれっ」
気弱そうな眼鏡を掛けた男が、壁際で三人の男達に取り囲まれている。
見た限りでは、皆高校生ぐらいだろうか。
「頼むから、暴力はやめてよっ」
眼鏡の男は小さなバッグを胸に抱え、逃げ腰で後ずさるが、二人の男がその後ろに回り込む。
「ハハハッ。なーに言ってんだよ、西田くんー。俺らは別に、お前をいじめようってんじゃないんだぜー?」
正面に立っている主犯格らしい男がワザとらしくおどけて言うと、
「そうそう」
後ろの二人も嫌な笑いを浮かべた。
次の瞬間、主犯格の男は、当たり前のように眼鏡の男の腕の中にあるバッグを力ずくで奪うと、その中から慣れたように財布を抜き取った。
「あっ」
「大人しく金さえ渡してくれればいいんだよッ。…いつも通りなッ」
そう言って、その財布を取ったことを誇示するように、財布を持った右手を上げてみせた。
それを見た後ろの二人も満足げに、
「へへへ…そういうこった」
そう言って下品な笑いを浮かべた、その時。
男が持っていた右手から、財布は消えていた。
後ろから素早い動作で奪われたのだ。
「なっ!?誰だッ!!」
主犯格の男が慌てて振り返ると。
そこには、涼しい顔をした少年が立っていた
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