波瀾の再会

第30話

暖かい春の日差しが降り注ぐ、駅前の噴水広場。

そこは、沢山の木々や草花が植えられた広い公園になっており、噴水を囲むように置かれた数あるベンチは、殆ど空きが無い状態で、多くの人々の憩いの場となっているようだった。


噴水のふちに座っていた冬樹は、持っていたアルバイトの情報雑誌を横に放ると、ひとつ溜息をついた。


「あーあ…」


(探してみると、無いもんだな…アルバイトなんて。どうしよう…)


良く考えたら、自分はまだ…16にもなっていない。


(考えがちょっと甘チャンだったな…)


自分のあまりにも安易な思考に思わず呆れる。


(でも、生活掛かってるし…)


たかだか高校生の身で、たいした額を稼ぐことなど出来ないことぐらいは十分承知している。

生活していく上で、今は仕送りに頼るしかないのが現状だとは思う。

でも、せめて小遣いの分ぐらいは、甘えず自分で何とかしたいと冬樹は思っていた。


(やっぱり、ドカタか…?)


正直、カネは良い。


(でも、いくらなんでも体力的に問題あるよな…やっぱ…)


流石に限度があるだろう。


(喧嘩なら男並みなんだけどな…)


心の中で考えを巡らせながら、冬樹は前髪をぐしゃり…とかき上げた。


普段は、自分の心の内を見せないように、人前ではポーカーフェイスを保っている冬樹だったが、今の彼は端から見たらとても表情豊かだった。

心の中での自問自答に顔をしかめたり、げんなりしたりしている。

勿論、誰もそんな彼を知る者はいなかったが…。


冬樹は一呼吸置くと、ずっと背にしていた噴水を振り返ると、暫く何を思うでもなくボーっと眺めた。

ザアザアと吹き出す水の飛沫が陽に照らされてキラキラと光っている。

眩しい位だった。

その光の向こう側を、同年代位の女の子達が会話を弾ませながら楽しそうに通り過ぎていった。

その様子を何気なく視界に入れながらふと、思わぬことを考える。


(いっそのこと、夜だけ女に戻る…とか?)


ものすごく、金はいい。

勿論、業種にもよるが…。

だが、思わず女の格好をして愛想笑いを浮かべる自分を想像しかけて…やめた。


(だめだ、想像すんのもヤダ…。それこそ自殺行為だって…)


冬樹は、ひとり脱力した。


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