第25話

「いやだっ!!なんでっ!?」


捜索が打ち切られたと知らされた時、夏樹は伯父を含む大人達に詰め寄った。


「何でお父さんたち、さがすのやめちゃうのっ!?」


親戚や父の仕事関係の者達が集まる中、夏樹は誰に言うでもなく、救いを求めるように言った。

だが、殆どの者が気まずそうに視線を逸らし、伯父だけが困った様子で夏樹に視線を合わせて言った。


「冬樹くん、お父さん達が助かる見込みは、もう殆ど無いんだよ。車さえ見付けられないんだ…」


宥めるように両肩を掴まれる。

だが、夏樹はその腕を振り払って叫んだ。


「そんなのわからないっ!生きてるかも知れないじゃないかっ!!」


興奮して叫ぶ夏樹を、大人達は憐れんだ目で見つめていた。


「冬樹くんっ」

「やだっ!」


(違う!!冬樹じゃない!!夏樹なんだもん!!)



そうだ…、そうなんだ。


ふゆちゃんは…。



ふゆちゃんは、夏樹のせいで。

夏樹の代わりになって、事故にまき込まれたんだ。



ふゆちゃんが…お父さん達が死んだなんて嘘だ!!


まだ、わからないのに。


(絶対に信じない!!信じないもん!!)


きっと、帰ってくる!!


きっと!!





『死んだなんて嘘だ』

『きっと帰ってくる』


そんなことを思っているうちに、あっという間に年月は過ぎて行った。



オレはずるい。

認めたくなかっただけなんだ。


『夏樹のせいで冬樹が死んだ』という事実を。



手に持っていたフォトフレームの写真の上に一滴の涙がぽたりと落ちた。

慌ててシャツの袖でゴシゴシと擦るが、自分の意志とは裏腹に、涙は後を絶たず、ぽろぽろと零れ落ちてくる。


「……っ…」


(油断すると、これだ…)



泣かないって、決めたのに…。




(ふゆちゃん…)





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