第19話
「お前さぁ、人を呼び出しといて待たせるのって、ホント失礼だぞ?」
あまりにも反省の気持ちがない長瀬に対して、説教を口にした矢先。
自分達の目の前を、先程の少年が通り過ぎて行ったのだが。
(あ…れ?)
ふと、何かが引っ掛かった。
「ごめん。悪かったと思ってるよォ。お詫びになんかおごるからさーっ」
まんまとオレの誘導に引っ掛かった長瀬に、
「よしッ商談成立なッ」
そう言って、俺はニヤリと笑った。
両手を目の前で組んで、お願いのポーズで俺を拝んでいた長瀬は、「はめられた」…と、苦笑を浮かべている。
長瀬とふざけあいながらも、先程の少年に感じた違和感が何なのか気になって、自然とその姿を横目で追ってしまう。
あいつ…さっきの…。
何処かで見たことあるような?
少年は、この周辺にあまり詳しくないのか、時々立ち止まっては辺りを見回している。
でも、どこでだっけ…?
思い出せそうで、思い出せない。
「とりあえず行こうぜ」
これから向かう方向に指をさして歩き出す長瀬に、俺は「おう」と頷くと。
(まぁ…気のせいかな…?)
そうして、その場を後にした。
賑わう駅前。
そんな風に人に見られていたとは露知らず、冬樹は周囲をゆっくりと見て歩きながら、自分の家へと向かっていた。
(この辺りも、だいぶ変わったな…)
記憶にある限りでは、こんなに駅ビルやショッピングモールなどの施設が充実してはいなかった筈だ。
(もう、八年…だもんな…)
八年という年月は、街の景色は勿論のこと、人の人生を変えるのも容易い程に長い時間だという事を自分は知っている。
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