第18話
どれだけ、そちらに気を取られていたのだろう。
「…や……さや…」
「……」
「おいッ雅耶!!」
そこで、ハッとして自分が名を呼ばれていることに気が付いた。
「あ…長瀬…。いつの間に…」
そこには、ずっと待っていた長瀬が遅刻を悪びれる様子もなく笑顔で立っていた。
小さく手を上げて「やぁ」なんて言っている。
「なーに見とれちゃってんの?雅耶ちゃんv『いつの間に』じゃないよっ」
「何だよ?見とれてるって…」
「違うの?あの親切な少年♪」
すっかり冷やかしモードな長瀬の態度に思わず脱力する。
「あのなー…そういう言い方やめろって…。感心して観てたんだろー」
こいつは、いつだってこういう軽いノリでからかってくるのだ。
長瀬は、にゃはは…と笑うと、
「わかった、わかった。でも、本当…イマドキ貴重だよな?」
二人して、先程の少年達の方に視線を流す。
転んだ男の子の親が気付いて迎えに来たようで、その『親切な少年』に手を振って別れていくのが見えた。
(良かった。親御さん、ちゃんといたんだ…)
他人事ながらも、何となくホッとする。
「まぁ、それはさておき、良かった良かった」
おちゃらけた様子で、長瀬が続ける。
「何がだよ?」
「えー?泣いてるのが雅耶じゃなくて♪」
流石にその言葉にカチンと来る。
「あのな~ッ!」
「待ち合わせ場所に俺がいないんで、寂しがってんじゃないかなーってさ。泣き声聞こえたからいそいできたんだぞー♪…なんてねっ」
冗談にしたって、酷い言いぐさだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます