第15話
お世話になった伯父と伯母にも最後に挨拶をすると、冬樹はその家を後にした。
もう、伯父は特に何も言わなかった。
伯母は、最後まで心配げに
「ちゃんと食事をとって、身体に気を付けるのよ。何かあったら必ず連絡しなさいね」
そう言ってくれた。
「離れていても…あなたが成人するまでは、私達があなたの親なのよ。それを忘れないでね」
そう、付け加えて。
伯父も、その言葉に静かに頷いていた。
そうして、玄関まで二人に見送られて家を出たのだ。
家の外に出ると、冬樹は今一度その伯父の家を振り返り、改めて見上げた。
八年間、お世話になった家。
本当は、こんな風に温かく見送ってもらえる資格なんか自分にはないのに。
迷惑ばかり掛けてきた自分。
ただただ、それが心苦しくて仕方が無かった。
その苦しみから逃れたくて。
もう、これ以上伯父夫婦に迷惑を掛けたくなくて…。
それで、家を出ることを決意したようなものだ。
(ごめんなさい…)
オレには、伯父さん達に言えなかったことがある。
ずっとずっと、隠していたことが…あるんだ。
でも、それは…。
これからも、自分の中にしまって生きていく覚悟を決めたから。
冬樹は、家に向かって一礼すると、ゆっくりとその場を後にした。
もう、ここには二度と戻って来ない。
オレは、これからは独りで生きていくと決めたんだ。
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