第13話

そして、その日の夜。

冬樹は父に連れられて、うちへやって来た。


「真智子…。冬樹くんだ」


父の背後から、軽く背中を押され、前に出てきた少年は。

しっかりと頭を下げると、


「よろしくおねがいします」


そう、挨拶をした。



(…えっ?これが、この前の冬樹くん?)


記憶にあった少年とは随分と印象が違っていることに驚きを隠せなかった。

見掛けは、半ズボンがよく似合っている可愛らしい男の子。

体格は、小学二年生の割には少し小さめか、何より線が細い。

冬樹と夏樹を見分けられなかった自分が言うのも何だが、女の子にも見える位だ。


けれど、その幼い容姿とは反対に、背筋はしっかりと伸びていて、何より表情に隙がない…真智子には、そう見えたのだ。


以前あった時は、こんなでは無かった。

もっと、年相応の無邪気な子供だった筈だ。


そして…。

何よりも、もっと泣いているものと思っていた。


突然、大切な家族を全て失い、こんな小さな身で独りぼっちになってしまったのだ。

いくら親戚が自分を引き取ってくれると言っても、普通なら…普通の子供なら、その現実をそんなに簡単に割り切れる筈がない。

もしも、自分が冬樹と同じ立場だったなら、きっと耐えられない…そう思っていた。



でも、この八年という長い年月の間…、彼は一度も自分達に涙を見せることは無かった。

その代わりに、笑顔も…怒る素振りさえも、見せはしなかった。


自分からは何も言わない。

どんなに明るく話しかけてみても、大した反応は返ってこない…。


もともと大人しい子なのかと思えば、すごい喧嘩をして傷だらけで帰ってきたり…。


朝、家を出たのに、実は学校には行ってなかったり…。

中学に入ってからは、結構悪い評判を耳にすることさえあった。


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